唇を濡らす冷めない熱
素敵に変身した眞杉さんはともかく、私はいつもとそう変わりない。それに比べてあの男達は立っているだけなのに纏うオーラすら違って見える、正直これ以上近付きたくもないくらいに。
そんな私たちの気持ちに気付きもしない鷹尾さんと、気付いてるくせに知らないふりをしてこちらに手を振る梨ヶ瀬さん。今はその嘘くさい笑顔が物凄く憎らしい……
「もう逃げられませんよね……?」
周りの視線と緊張からか震えた声を出す眞杉さん。そんな彼女の様子を見て、もう少し気を使えよこの男たちは! という気持ちを抑えられなくなりそうになる。
それでも私がしっかりしなくては、と思いこちらも余裕の笑顔で手を振り返して見せた。周りの女性たちの視線が痛いが、もうどうにでもなってしまえ。
いっそ、見せびらかして優越感にでも浸ってやろうじゃないの!
「ごめんなさい、待たせちゃって」
まるで恋人にするように私は梨ヶ瀬さんの腕に自分のそれを絡ませてみせる。眞杉さんは驚いたようだったけれど、鷹尾さんはいつもと違う彼女に見惚れて気付きもしないようだった。
それはそれでどうなのかとも思わないではなかったが、今回のデートで二人に親密になって欲しい気持ちは変わらないのでそのままにしておくことにした。
のだけど……
「今日の横井さんは別人みたいに積極的なんだ? まあ俺は嬉しいけれど、あの二人は誤解しちゃうかもね」