唇を濡らす冷めない熱
その言葉にハッとするが、もう時すでに遅し。期待の眼差しで私達を見つめる眞杉さんは完全に誤解しているとしか思えない、彼女の隣にいる鷹尾さんですら分かったというようにうんうんと頷いている。
……完全にやらかしてしまった。こうなる事ももしかしたら梨ヶ瀬さんの計算の内だったのかもしれない。自分の単純な性格をこんなに悔やんだのは初めてかもしれなかった。
「別にいいんです、誤解なら後でいくらでも解くことが出来る筈ですから……!」
そう思い通りになってやるもんですか、あの二人さえ上手くいってしまえば私たちの事なんて後でどうとでも出来るはず。そう思っての言葉だったのに……
「そう、それじゃあ今日中に誤解じゃなくしてしまえばいいのかな? これは楽しめそうかもね」
なんて余裕で言われてしまったら、こっちだって受けて立つしかなくなるじゃない? 短気な私はあっという間に梨ヶ瀬さんの思うがままの言動をとってしまう。
「出来るんですか、すごい自信ですね? じゃあ出来なかったら梨ヶ瀬さんは私のいう事を一つ聞く、ってのはどうです?」
「へえ、いいね。じゃあ、今日は俺と横井さんで勝負だね」
なんて私たちの間で勝負が始まったことなど知りもしない眞杉さんと鷹尾さんに生暖かい目で見られながら、私達は遊園地の門をくぐったのだった。