唇を濡らす冷めない熱
「あれ! 日本一のスリルがあるとも言われてるジェットコースターなんです、乗らなきゃ絶対損ですよ?」
意外にも絶叫系が好きらしい眞杉さん、興奮する彼女にがっちりと手を握られてデレデレになってしまっている鷹尾さんはもう放っておいてもいいのかもしれない。
そんな事より問題は……
「だそうですよ、私達も並びますか? 梨ヶ瀬さん」
意外なのは眞杉さんだけではなかったらしい。さっきまで余裕を見せていた梨ヶ瀬さんだったが、いざジェットコースターを目の前するとなぜか手に持ったスマホから視線を動かさなくなった。
……これは、もしかしてもしかします?
「乗りますよね、梨ヶ瀬さんも。あのスリル満点のジェットコースター」
「いや、俺はここでみんなの写真でも撮っておくよ。横井さんは二人と一緒に乗ってくれば良い」
思わずガッツポーズをしそうになるのをグッと堪える、神様はやっと私に味方をしてくれる気になったらしい。これがチャンスでなければなんだというの? やっと見つけた梨ヶ瀬さんの弱みに顔がにやけるのを抑えられない。
「そんな訳にはいきませんよ、二人が上手くいくように梨ヶ瀬さんも応援するんでしょう? じゃあきちんとその役目を果たさないと」
「顔が笑ってるよ、横井さん。そんなに喜ばれると傷付くんだけど……」
なんて少し落ち込んで見せる梨ヶ瀬さんに、ますます気分が良くなってくる。今日この遊園地を選んでくれた鷹尾さん感謝しなくちゃ、なんてそんな事を思ってしまう。