唇を濡らす冷めない熱
「具合が悪くないのならもう問題ないですよね、次のアトラクションに行きましょう」
梨ヶ瀬さんの腕から逃れるように立ち上がろうとすると、とんでもないものが私の目に入る。
ちょっと待って、まさか……
「あ、眞杉さんと鷹尾がこっちを見てるね。いつからいたんだろう?」
そう、すぐ傍には私達を見て真っ赤な顔をしている眞杉さんと鷹尾さん。この様子だとさっきの梨ヶ瀬さんからのキスもバッチリ見られてしまっていた可能性が高い。
まさかこれも梨ヶ瀬さんの作戦の内だって言うの? 信じられない気持ちで梨ヶ瀬さんを見上げれば彼は困ったように笑ってみせる、わざとではないが梨ヶ瀬さん的にはナイスタイミングだとでも思っているのだろう。
「信じられない……っ!」
無理矢理梨ヶ瀬さんの腕を引き剥がして立ちあがると、眞杉さん達の誤解を解くために二人に近づく。照れ臭そうに目を逸らす眞杉さんと鷹尾さんに、なんと話せば誤解だと分かってくれるのか……
「ごめんなさい、邪魔しちゃって。私達は二人を探してたので」
「そうなんだ、次のアトラクションもみんなで乗るんだとばかり思ってたから」
焦ったようにそう話す二人に、こっちの方が申し訳ない気持ちになってくる。眞杉さんと鷹尾さんに悪気はないし、この二人には何の罪もない。
……悪いのはただ一人、そう梨ヶ瀬さんだけなのだから!