唇を濡らす冷めない熱
曇らない、その微笑み
酷く疲れる昼休みを終えてデスクに戻れば、机の上には眞杉さんからと思われるメモが置かれていて。きっと謝罪の言葉が書かれているのだろうなと思うと、鷹尾さんに協力すると約束したことが申し訳なくなる。
眞杉さんだってあれだけあからさまに避けるのだから、何か理由があるのだろうに……
「あーあ、これからどうしよう」
メモの中身を確認して、これから眞杉さんにこの事をどう話すかに頭を悩まる。この日の午後は仕事が思うように捗らなくて、結局二時間ほどの残業をして帰る事になってしまった。
それが良くなかったのか……
「あれ? 横井さんも帰りはこっち方面なの?」
「……ええ、そうかもしれませんね」
今日はもう顔を診なくて済む、声も聞かなくていいんだと思ってたのに。どうして帰りの電車でまでこの人と同じ時間を過ごさなきゃならないの?
せめて車両が違えば気にしなくていいのに、どうして私がいつも乗り込む車両に梨ヶ瀬さんがいるのか。
「凄い適当な返事だね? 俺は一応君の上司なのに」
「勤務時間は終わってますし、今日はもう精神的に限界なんです」
朝から梨ヶ瀬さんの存在に酷く気を使ってクタクタなんですよ、もう放っておいてもらえます?そう言いたいのに、彼は私の隣にぴったりと張り付き離れてくれそうにない。