唇を濡らす冷めない熱
「あ、横井さん達もお化け屋敷に来てたんですね!」
外に出たのと同時に偶然同じアトラクションに来てたのか眞杉さん達に出会った。私と梨ヶ瀬さんとは違いお化け屋敷でお互いの距離を縮めたのか、眞杉さんは鷹尾さんの腕に手を添えている。そんな眞杉さんを愛おしそうに見つめている鷹尾さん。
……いいなあ、私もこんな関係が理想なんだけれどな。
私と梨ヶ瀬さんではこんな未来は想像できない、それに彼と付き合うつもりもない。
「二人ともどうだった? 私は転んで怪我しちゃって、でもすごく美形のお化けに出会えたからラッキーだったかな?」
「へえ、そんなお化けがいたんですか? 気が付かなかったですね、鷹尾さん」
仲良さげな二人を見ているとどうしても人恋しくなる、その相手が梨ヶ瀬さんでなければいいのだけど。彼に対して好意が無いわけじゃない、それでもお付き合いとなると気が進まない。私の心の中は複雑だった。
「置いて行かないでくれる、横井さん?」
「すぐについてくるくせに文句言わないでください」
少し拗ねたような梨ヶ瀬さんの態度と、それに冷たく接する私。
そんな私たちの微妙な雰囲気に気付いたのか、鷹尾さんの提案で残りの時間はみんなでアトラクションを回る事になった。
結局その後は私は眞杉さんと、梨ヶ瀬さんは鷹尾さんと話しながら遊園地の閉園時間まで遊んだのだった。