唇を濡らす冷めない熱
伝えない、その想い
「え……嘘? なんでこんな熱が……」
昨日、伊藤さんや梨ヶ瀬さんの事で色々あったからだろうか? 身体が怠くて昼過ぎに起きると三十八度を超える熱が出ていた。
一人暮らしで頼る人もいない状況で病気になるの程辛いことはない、私は悪化しないうちにと解熱剤と風邪薬を飲んでベッドへと戻る。
何か食べなくては良くないとは思いつつも、食欲がわかないのでそのままにしてしまった。
「ああ、伊藤さんからメッセージが来てる」
その内容は今度いつ会えるか、というものだったが今の状態では何とも言えない。体調が悪いという返事を送ってそのまま布団に潜り込めば、すぐに睡魔が襲ってきてそのまま眠ってしまった。
ブーブーブーとどこからか聞こえてくる、それに気付いていても身体がとても重くて動けそうにない。やっとのことで瞼を開ければ、いつの間に夜になったのか部屋の中は真っ暗だった。
その辺に置いたはずだと寝たままスマホを探して手に取り時間を確認する、やはりもう夜の二時になっていた。
起きた方が良いのか迷ったが、やはりまだ身体がいう事を聞かないのでそのままもう一度眠りにつこうとスマホを手放そうとした。でも、またブーブーブーと鳴りだすから諦めて画面を見ると……
「……え? なんで梨ヶ瀬さん?」
こんな夜中に彼が電話をしてきたことはない、もしかして何か急ぎの用でもあるのだろうか? そう思って無理矢理起き上がり通話ボタンを押した。