唇を濡らす冷めない熱
【ピンポーン……】
……インターフォンの音で、目が覚める。熱の所為か頭がぼんやりしていて、それが夢なのか現実なのかの区別がつかなくて、もう一度枕に顔を埋めてしまった。
外はまだ暗い、こんな時間にインターフォンを鳴らすような馬鹿はいないはずだと思って。
【ピンポーン、ピンポーン……】
今度は間違いなくインターフォンが鳴った、よりによってこんな体の辛い状態で、こんな真夜中に何の用があるのか? これ以上ならされたら起きて文句を言ってやる、そう思ったのと同時に四回目が鳴らされる。
流石にイラっとして、なんとか身体を起こすとフラフラと玄関へ向かいドアスコープから外を確認する。
「……誰もいない?」
小さな穴から見える玄関先に人は見えない、不思議に思ってチェーンを外して玄関を少し開けた瞬間に人の手がその隙間に差し込まれた。
「誰……ッ⁉」
驚いて無理矢理ドアを閉めようとするが、すぐに革靴の先がねじ込まれてそれ以上扉を動かすことが出来ない。なんなの? もしかして、変質者?
熱の所為で力が入らない、焦るほど手に汗をかいてドアノブが滑りそうになる。
「嫌! 警察呼びますよ……っ」
「待って! 横井さん、俺だから。脅かしてごめん、でもこうしないと開けてくれないと思って」