唇を濡らす冷めない熱
何度も繰り返される、優しく触れるだけのキス。それだけでも意識が飛びそうになるのに、梨ヶ瀬さんの行為はそれだけで止まらなかった。
分かってる、私も梨ヶ瀬さんも大人の男女なのだから一歩進んでしまえばその先も欲しくなる。それは当然の事なのだけど……
唇を舌先でノックされる、口を開けということなんだろう。流されるままそれに応じようとしたが、ハッとして彼から逃れようとする。
「なに、まだ逃げるの? 駄目、もう逃がさないよ」
少し体を浮かせた梨ヶ瀬さんがそう言ってジロリと睨んでくる、確かにここで中断させるのは申し訳ないと思うけれど!
「風邪、移っちゃいます! 病人なんですよ私は、ちゃんと分かってますか?」
確かにここまで流されてしまった私も悪い、でもこれ以上は何としてでも止めなくては。梨ヶ瀬さんは私の上司、責任ある立場の彼に風邪などひかせるわけにはいかない。
なのに、それなのに……!
「いいよ、移してよ。風邪は移すと早く治るって言うし、ね?」
全然良くありません! 梨ヶ瀬さんのその言葉に頭が吹っ飛びそうになる。冷静で余裕のある男性の皮を脱ぎ捨てた彼は、もう別人のように甘く淫靡に私を誘惑してくるから堪らない。
いつもよりも強引で大胆になった梨ヶ瀬さん、彼は私が思っていたよりずっと肉食系男子だったらしい。