唇を濡らす冷めない熱
ずいぶん長い時間、口付けていたと思う。まるで今まで焦らされていた分のお返しだというようように、蕩ける様な甘くて熱いキスだった。
唇が離れて、至近距離で梨ヶ瀬さんと視線が合った。その瞳に宿る炎が私をその場に縫い付けたままにしてしまう。
「……も、本当に私は知らないですからね」
「うん、でも今じゃなきゃ麗奈の気持ちが変わってしまいそうだったから」
それはそうかもしれない、熱に魘されて無ければこんなに簡単に梨ヶ瀬さんを部屋の上げたりしなかった。頭がもっとハッキリしていたら、きっとこうしてキスなんて……
「別に梨ヶ瀬さんの事を好きなんて言った覚えもありませんけれどね」
私の気持ちを見透かしたような彼のセリフにちょっとムッとして、そんな風に返してしまう。たとえ梨ヶ瀬さんに私の感情が全て気付かれていたとしても……まだ伝えない、その想いだけは。
可愛くない言葉に梨ヶ瀬さんがほんの少し眉を寄せた、いつまでも素直にならない私の態度が気に入らなかったのかもしれない。
「……今だけの事にする気、こんなキスまでさせておいて」
「勝手にしたんじゃないですか、私はダメって言ったのに」
していいとも言ってない、まるで私が誘ったように言われるのは心外だ。心の奥底で期待したのは本音でもあったけれど。