唇を濡らす冷めない熱
「いい香り……」
出来立ての料理を前にしてお腹が勝手に鳴り出してしまう、昨日はまともな食事をとれる状態ではなかった。少し体調が回復したのもあって、それなりに空腹を感じている。
ふわりと優しいミルクの香りに、ゴクリと唾を飲み込むと梨ヶ瀬さんから小さな椀とレンゲを渡される。
「まだ熱いから気を付けてね?」
「……ありがとうございます、いただきます」
ふうふうと冷まして、ゆっくり口の中へと運ぶ。梨ヶ瀬さんが作ってくれたミルクのリゾットはすごく優しい味で、すんなりと喉を通っていく。
「……美味しいです、すごく」
それだけを伝えると空腹だったのもあってか、あっという間に椀の中身を食べ終えてしまった。するとすぐに梨ヶ瀬さんが椀を私から受け取りおかわりをよそってくれる。
そんな二人の関係がなんだか擽ったい気もしたが、自分は病人だからと言い訳してそのまま甘えることにした。
結局、梨ヶ瀬さんの作ってくれたリゾットを完食して彼に洗い物までさせて。申し訳ないなと思ったけれど、帰り際に許可もなくまたキスをされたのでそれでチャラだと考えることにした。
この先梨ヶ瀬さんは当然のように私にキスをしてくるつもりなのかもしれない、そんな先の事を心配して頭がまた痛くなりそうになりながら。