唇を濡らす冷めない熱
「それで、これからどうしていくつもり? 俺に相談したってことは、頼られてるって思ってもいいってこと?」
「別にそういうつもりでは、伊藤さんが話せって煩かったから……」
余計な一言を言ってしまったと気付いた時にもう遅かった、その次の瞬間には梨ヶ瀬さんが片手であっさりと私のカップを奪っていて。びっくりするくらい顔を近づけられる、本当に互いの唇が触れないギリギリの距離。
「また伊藤さん? 麗奈は伊藤さんの言うことならなんでも素直に聞くんだ?」
「そういうわけでは、ないです。多分」
「ふーん……多分、ねえ」
どうしてこう思ったことをそのまま言葉にしてしまうのか。自分に素直といえば聞こえがいいが、ここまでくると本当にただのバカみたいじゃない。
そもそも梨ヶ瀬さんがいけないのだと思う、こんな距離で見つめられてまともな受け答えなど出来るかけがない。本当にこの人は性格がものすごく悪い。
「だって、分からないんです! どこまで梨ヶ瀬さんを信じていいのか、甘えてもいいのか。貴方みたいに恋の駆け引きなんて上手くないんですから」
「そんなの俺だって同じだよ、駆け引きなんてしてるつもりもない。目の前にいる君に必要とされたくて、こっちだって結構必死なんだから」
「……え?」