唇を濡らす冷めない熱
「梨ヶ瀬さんらしい言葉で安心しました。逆にここで引かれるようなら、これ以上は話す気も無かったですし」
「それは良かった。麗奈が話してくれなければ、俺もどんな手を使って聞き出そうかと考えていたところだったから」
顔は笑顔なのに目は全然笑ってないですよね、それいい加減やめてくれません? そう言いたいのに出来ないのは、彼が本気で私を心配してくれてることが分かるから。
そうやって無理して聞き出してでも、私を守りたいと思ってくれてることを知っている。だから……
「もう、勝てる気がしなくなってきました。梨ヶ瀬さんには」
「じゃあ降参する? そんな事を言われたら都合よく受け取って、今すぐにでも君を俺のものにしちゃうけど」
誰もそこまで許した覚えはありませんけど? 梨ヶ瀬さんってこういう時、妙に強引になるからちょっと困る。でもあからさまな拒否は出来なくて、あれこれ悩んでいるうちに距離を詰められて……
「ちょっ、近いです。コーヒー零れるし、火傷しちゃいますから」
「じゃあ、これはこっちね。今は二人の関係を進展させる方が優先でしょ?」
そう言って私の手からコーヒーカップを奪い取ってテーブルに置いてしまう。どんどん話を進めたがる梨ヶ瀬さんと、二人の進展にもう少し時間が欲しい私。どうしてこうも嚙み合わないのか。