唇を濡らす冷めない熱
いつになく強引な梨ヶ瀬さんに驚きながらも、微かな抵抗をするがあまり意味はなさなかった。すぐに彼の胸を押し返そうとする私の両手をその大きな手で拘束して、思うがままに唇を貪ってくる。
こんな風にされるがままなんて自分らしくない、そう分かってるのに普段は余裕そうな彼が理性を無くしかけて私を求める姿がどうしようもなく可愛く見えて。
だけどまだ私は彼を全て受け入れようとはせず、口内を探りたがる梨ヶ瀬さんの侵入を必死で阻む。だからと言ってそんな私を相手に彼が怯む訳もなく……
やっと唇が離れホッと安心すると、今度は私の首元に梨ヶ瀬さんが顔を埋めた。首筋に唇が触れたと思った瞬間、チクリとした痛みを感じて焦る。
「ちょっ……⁉ 何を、ぅう~~っ‼」
まさかキスマークを付けられると思い反応した瞬間に、強引に割り込まれるとは思わなかった。すぐに口内の奥に引っ込んだ私の舌を探し出し、自分のそれに絡めてくる。
昔からディープなキスはあまり好きじゃなかった、それを気持ち良いとは思えなかったしその生々しさが苦手で。なのに、梨ヶ瀬さんとにキスは違った。
ずっとその生々しさが苦手だったはずなのに、これが梨ヶ瀬さんとのリアルなキスだと思わされて身体が何故か火照ってくる。私の口腔内を余すところなく征服する彼に、残った理性も全部溶かされそうで。
ざらりとした梨ヶ瀬さんの舌の感触が、逃がさないというようにどこまでも捕らえようとしてくるその熱が……
「ほら、捕まえた」