唇を濡らす冷めない熱

「結局私たちも一緒に行くことになるんですね、せっかくのチャンスだったのに鷹尾(たかお)さんって本当に……」
「意気地がないよね、まあそれが鷹尾らしいんだけど」

 目の前を鷹尾さんと眞杉(ますぎ)さんが並んで歩いている、私たちがついてくる必要はどこにあったのだろうか? 新しいブックカフェには興味あるが、鷹尾さんにもそろそろ本気で頑張って欲しいのだけど。
 眞杉さんだって彼の事を嫌ってなどいない、もう少し押せば良い返事がもらえると思うのだけれど。見ていて本当にじれったい。

「さっさと告白して付き合ってしまえばいいのに、とは思ってます。両思いなのは分かりきってるんですから、見ていてもどかしい」
「……それと全く同じことを、あの二人も考えてると思うよ」

 そうなんだ、じゃあ尚更さっさと恋人同士になればいいのに。では何故そうしないのか、私にはよく分からないな。なんて思っていると……

「なんですか、ジッとこっちを見て。いまのは鷹尾さんと眞杉さんの話ですよね?」
「そうなんだけど、麗奈(れな)には通じてないんだなって。じれったいからさっさと付き合えって、鷹尾に言われたのは俺の方だしね」

 ……は? じれったいのは鷹尾さんたちの方じゃないの? 鷹尾さんたちから見ると私と梨ヶ瀬(なしがせ)さんがそういう風に見えるんだって気付かされて、ものすごく頭が痛くなってしまった。


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