唇を濡らす冷めない熱
「そんな周りに口出す余裕が鷹尾さんにあるのならば、私達ももう少し彼らの為にお世話を焼いてあげてもいいかもしれませんね。眞杉さん、ちょっといいですか!」
「……え? 横井さん、いったい何をするつもり?」
驚いている梨ヶ瀬さんを無視して、私は眞杉さんに近寄ると彼女にこっそり囁いてから鷹尾さんに視線を移す。思った通り、鷹尾さんは私の行動に驚いているのでわざと彼を見て微笑んでやった。
鷹尾さんは梨ヶ瀬さんに余計な事を言ってる場合じゃないんだって、ちゃんと分からせてあげますからね?
「え? 今からですか、でも……」
眞杉さんが迷うのは分かってる、でもここでは女友達と言う立場を最大限利用させてもらうことにして。首を傾げ、彼女に甘えるようにその細い腕を掴んで見せる。
そうやって眞杉さんを鷹尾さんから引き離して、私の方へ……
「どうしても今からしか時間取れそうにないんです。私、どうしてもその店で眞杉さんと二人きりで話をしたくて」
「そうなんですか? 鷹尾さん、梨ヶ瀬さん! すみません、ブックカフェはまた今度にしてもらっていいですか?」
ほら、眞杉さんの優先順位が鷹尾さんから私に変わっちゃいましたよ? このままでは男二人がこの場に残されることになるが、さて鷹尾さんと梨ヶ瀬さんはどうするかしらね。
そうやって余計な事ばかりを話している男たちを、ちょっとだけ懲らしめてやるつもりだったのだけれど……