唇を濡らす冷めない熱
もしかして昨日のことだろうか? 鷹尾さんが席に付いた後の眞杉さんの態度はおかしかったし、その事について私に相談したいのかもしれない。
という事は今日のお昼は梨ヶ瀬さん達とは一緒にとらずに済む、そのことに思わずホッとしてしまう。私はデスクでパソコンの画面と睨めっこしている梨ヶ瀬さんに、なるべく小さな声で話しかける。
「あの……昼休みにちょっと予定が入ったので、今日は鷹尾さんと梨ヶ瀬さんで昼食は済ませてくれませんか」
「その相手って眞杉さん? それとも俺の知らない誰かだったりする?」
梨ヶ瀬さんはパソコン画面を見つめ、こちらを振り向きもせずそう言った。梨ヶ瀬さんの知らない誰かって、どうしてこの人はそんな事を気にするんだろう?
「眞杉さんであってます、ですが大事な話をしたいという事だったので二人きりで話をしたいんです」
「……そうだろうね。でもちゃんと分かってる? 横井さんは鷹尾に協力するって約束したんだよ」
「それは……ちゃんと分かってますけど」
今更ながら、簡単に鷹尾さん達からの頼みを聞いてしまった事を後悔しそうになる。かなり強引に約束させられたとはいえ、眞杉さんの気持ちを無視するような事はしたくなかった。
「協力はすると言いましたが、眞杉さんに無理強いするつもりは無いんです。そんなやり方で彼女が鷹尾さんに好意を持つとは思えませんし」