唇を濡らす冷めない熱
「それは、その……」
分かってる、彼女のように大人しい女性なら恋愛に消極的になってしまいがちなのも。だけどお互いに想い合っているのなら、もっと勇気を持って欲しい……そんな風に応援したくなっちゃダメかな?
「私も眞杉さんに協力するって約束するから、ね? 一緒に頑張ろう」
グッとテーブルに上半身を乗り出して、固く握られた彼女のこぶしに自分の手を重ねる。私を信用して欲しいという気持ちを込めて。
「横井さん、本当に頼ってもいいんですか? 私きっと面倒ですよ」
少しずつ顔を上げてくれる眞杉さんに力強く頷いてみせる、自分に出来る事なら二人の未来のためにやってやろうじゃない。
まだ不安を残したままだけど、少しだけ前向きな表情になってきた眞杉さんは私の両手を強く握ってお礼を言った。
……良かった、本当にそう思っているのに。頭の端で楽しそうに微笑む梨ヶ瀬さんが浮かんでは消える、きっと彼にはこんな事は予想済みだったのでしょうね。
「……はあ、あんな馬鹿な賭けしなきゃよかった」
自分から賭けに負けるように動いていく、そんな私の事を想像して楽しんでいるはずの梨ヶ瀬さんを恨むしかない。結局私は、複雑な気持ちで眞杉さんとの昼食を終えたのだった。