唇を濡らす冷めない熱
「それで……これから私はどうしたらいいんでしょうか? このまま放っておくってわけにも……」
納得したくない気持ちのあるけど、自分が置かれている状況はきちんと把握しておかなければならない。だからこうしてついて来てくれるこの人を頼ろうと思ったのに……
「それ、俺に聞くの? 横井さんはそれで後悔しない?」
「はあ? また訳の分からないい方をして、私が困ってるのくらい分かりますよね?」
どうして梨ヶ瀬さんの意見を聞くのが後悔に繋がるのかしら、それともストーカーはそのままにでもしてろって事? ここまで関わっておいてそれは酷くない?
梨ヶ瀬さんの反応にムッとして背の高い彼を睨みつけると……
「いいよ、俺が考えてあげても。だけど俺にとっても都合のいいアイデアしか浮かばないかもしれないけれど」
「どうして梨ヶ瀬さんに都合よくある必要が……?」
いつもいつも梨ヶ瀬さんはこうやってその笑顔に何かを隠して楽しんでる、今までに出会った事の無いタイプで本当に付き合いにくい。
「本当に分からない? 気付かないふりをして、誤魔化すのはズルだよ」
「気付くも気付かないも、梨ヶ瀬さんが何を言いたいのか私にはさっぱり……」
本当に狡いのはどっちよ、自分の言動がどれだけ人を振り回しているのか分かってるでしょうに。
悔しいけど、今の私はその中の一人になってしまいそうになる。