唇を濡らす冷めない熱
「それは駄目、俺は女の子にソファーを使わせて自分はのうのうとベッドで眠るような事は出来ないタイプだし」
確かに梨ヶ瀬さんならそんな感じがしない事もない、私だってなんだかんだでこの人はフェミニストな男性だと思っている。
そうでなきゃ、梨ヶ瀬さんに言われるままにこの部屋に来たりしない。
「だからって梨ヶ瀬さんと一緒のベッドで眠るなんて……」
いくらなんでもそんな事は出来ない、どれだけ私に襲うほどの魅力がないと言われても無理なものは無理なのだ。そんな私の言葉を聞いて梨ヶ瀬さんは一瞬ポカンとした顔をして私を見た直後、俯き肩を震わせた。
「あの、梨ヶ瀬さん……?」
「ふ、くくっ……あはは! 横井さん早とちりしてる、俺は一緒に寝ようなんて一言も言ってないよ?」
梨ヶ瀬さんの言葉を思い出し自分が何を勘違いしてか気付くと、一気に顔が熱くなっていく。確かに彼は私にベッドで寝るように言いかけたけど、その言葉を途中で止めたのは自分だった。きちんと最後まで聞こうともせずに……
「あ、でも、それは梨ヶ瀬さんの言い方が紛らわしいからっ!」
恥ずかしさでムキになり、彼の所為でもあると言っても梨ヶ瀬さんは余裕の笑みを浮かべるだけ。これじゃあ私ばかりがこの人の事を変に意識していたみたいで悔しい。