唇を濡らす冷めない熱
「うん、そうかもしれないね。でも横井さんが俺と一緒に寝るところを想像したのかと思うと、ちょっと期待していいのかなって考えちゃうよね」
「それくらいで期待なんてしないでください! ちょっと勘違いしただけじゃないですか」
へらへらと笑ってみせる梨ヶ瀬さんを相手に、ますます私は焦ってしまい感情的になってしまう。大きな声を出してしまったと、慌てて口を押えても彼は気にする様子はない。
さっきの台詞だって私が誤解するような言い方をわざとしたに違いない、私を試すようなことばかりする彼が本当に腹立たしい。
「うん、でも生理的に無理な男と一つのベッドで寝るとこなんて想像しないでしょ? 横井さんにとって俺はそういう意味でセーフな男なんだな、と」
「な、な……! そんなことを一人で勝手に納得しないでください!」
梨ヶ瀬さんの中で勝手に私との関係を進められているようで、こっちも慌てずにはいられない。それにセーフであればだれでもお付き合いできる相手というわけでもないでしょうに。
「ふうん、アウトですって否定はしないんだ?」
「ぐっ……!」
しまった! 今のは梨ヶ瀬さんの言う通り、嘘でも「貴方も無理です!」って言うべきところだった。素直な反応をすればするほどどんどん追い詰められていくのに、上手く躱すことも出来ないでいる。