唇を濡らす冷めない熱
見せない、その胸の内
「……え、もう朝?」
閉められたカーテンの隙間から漏れる朝日、その眩しさに目を細めながらもゆっくりと頭が働き始めた。
昨夜は片付けが終わってお風呂を済ませると、梨ヶ瀬さんがいつの間にか用意してくれていた晩御飯を食べた。その後、スマホでストーカーの撃退法について調べていたはずなのに。
色んなことがあって疲れていたのか、いつの間にか眠ってしまっていたみたい。だけどここは私に用意された部屋ではなく、梨ヶ瀬さんの寝室のベッドの上。記憶は無いけれど、私は寝ぼけて移動したのかな?
「とりあえず起きないと、梨ヶ瀬さんはもう起きてるのかしら?」
上半身を起こすとタオルケットがパサリと落ちて、普段のパジャマ代わりである身体にフィットしたタンクトップと短パン姿が目に入る。
急いで梨ヶ瀬さんのマンションに連れてこられたのもあって、きちんとしたパジャマを用意することが出来なかったのよ。
……まあ、あの人に見られなければそんなに問題は無いわよね? そんな風に軽く考えていたのだけれど。
「横井さん、そろそろ起きてくれる? 朝食の準備出来てるから準備が出来たらおいで」
扉をノックする音が聞こえ、梨ヶ瀬さんがこちらに声をかけてくる。私は「わかりました」とだけ返事をすると、彼がリビングに戻ったのを確認し、急いで自分の部屋に戻り着替えを済ませて洗面所へ向かう。
洗顔をしながら誰かと暮らすのって変な気分がするもんだわ、なんてボケッと考えたりしてしまったけれど。