唇を濡らす冷めない熱
「仕方ないでしょ? 横井さん、フローリングでそのまま寝てたんだから。俺はちゃんと言ったよね、女の子をベッド以外で寝せる気は無いって」
梨ヶ瀬さんはハッキリそう言うけれど、問題はそこじゃないの! 私は小柄な方でもなく、ジムに通い身体も筋肉質だったりする。お姫様抱っこなんてされたら、私が見た目より体重がある事がバレてしまったかも。
「だからって、私の許可なく勝手に抱き上げるなんて……!」
確かに勝手に床で眠ってしまってた私も悪かったと思う。せっかく梨ヶ瀬さんがベッドを譲ってくれたというのに、それを使わず眠ってしまったのだから。
だけど、私だって一応若い女なんだからそんなに簡単に触れられても困る。そう思ってたのに、彼から聞かされたのはもっととんでもない言葉で……
「そんな事よりさ、俺だって家に帰れば普通の男なんだって分かってる? いくら何でも恋人でもない男と暮らしてるのに、あの寝間着は無いんじゃない?」
「寝間着、ですか? それが何か……あっ!」
少し怒ったような梨ヶ瀬さんの様子に戸惑いながらも、いったい何のことを言っているのだろうと今朝の服装を思い出す。そう……朝は確か梨ヶ瀬さんのベッドで目覚めたはず、その時はびったりとしたタンクトップに短パン姿で……えええっ!?
「み、見たんですか! あんな格好の私をお姫様抱っこしたんですか、梨ヶ瀬さんは!」
信じられない、上司でもある彼にあの服装で抱き上げられたなんて! ショックで身体が震える。体重だけでなく、まさかあんな姿まで見られてしまうなんて……