唇を濡らす冷めない熱
そういう割には隣のストーカーの男性の事を気にしているように見える。ただの幼馴染なら、こんな風に一緒に謝りたいと言いになんて来ないでしょうし。
そう思ったのが顔に出てたのだろう、梨ヶ瀬さんが私の考えていたことをそのまま口にした。
「じゃあどうしてこの男についてきたの? この人がストーカー行為をしていたことを貴女は知っているんだよね?」
「はい、すみません。私は彼の横井さんに対する行動を知ってて、それで……」
女性の話ではストーカー男はまだ大学生らしく、彼女はこの男性より年上で小さい頃から面倒を見ていた弟のような存在だったらしい。
女性は今でもこの男性のお節介を妬いていたが、このところ様子がおかしかったためそっと見張っていたそうで……
何度も注意したがストーカー行為を止めない男性に、これ以上続けるのならば彼との縁を切り警察に相談すると話したらしい。
いつの間にか彼が所持していた写真や持ち物などを、女性は証拠として持ち帰っていたそうだ。
「もちろんこんなことで横井さんの不安がなくなるとは思いません。相当怖い思いもして、気持ち悪さもあったはず。ですから……」
そのまま俯いてしまう女性、やはり男性の未来が心配なのだと分かる。弟みたいなものといいながらも、彼女はずっと男性の手を握ってる。
女性の気持ちは痛いほど伝わってくるが、今本当に大事なのは……
「こんな風に幼馴染の女性にばかり謝ってもらってていいんですか? 私にストーカー行為をしたのは貴方ですよね?」
私にきちんと謝罪するべきなのは幼馴染の女性でなく犯人であるこの人だ、それは私も梨ヶ瀬さんも譲れないことのはず。