唇を濡らす冷めない熱
「それじゃあ、何時にこっちに着くんです? はい、はい……分かりました、私もその時間には××空港に着くようにします!」
『いいのよ、無理しなくても? 私は要と一緒なんだし、横井さんだって忙しいでしょう?』
長松主任はそういうが、私は一分一秒でも早く二人に会いたい。いままで梨ヶ瀬さんの傍にいて、やさぐれた心を癒してほしい。
それに……さっきの件も相談したいしね。
「いいえ、大丈夫です。明日、明後日は私との時間を優先してください。と伝えておいてください、御堂さんに。それじゃ!」
まだ何か言いたそうな主任に申し訳ないと思いながら、終了ボタンを押した。なぜなら私には今すぐにやらなければならないことが出来たから。
「ねえ、横井さん。御堂って……」
「すみません、梨ヶ瀬さん。私、今すぐ部屋に戻って荷物をまとめてアパートに帰らせてもらいますね。短い間でしたが本当にお世話になりました!」
明日のためにやらなきゃいけない事がたくさん出来た、こうして梨ヶ瀬さんの相手をしている場合じゃない。
さっきの会話も忘れて私はズンズンと梨ヶ瀬さんのマンションに向かって歩く。
「……ふうん、なるほどね。それじゃあ、アイツも使えるかもな」
そんな梨ヶ瀬さんの呟きに私は少しも気付くこともないままで。