君と一緒!
そんな気分で帰ってきた私は少しイラついていた。イチはそんなことも気にすることなく、今日も私にじゃれついてきた。

「ねえねえミオ、次は何をするの??」
「僕もやりたいよ!」
「ミオ寒くない?温めてあげるよ!」

まるでじゃれつく子犬だ。

「あああ、うっとうしい!!イチ、おとなしくしなさい!人形らしくできないの!?」

私は思わず言ってしまった。

「…っ…寂しかったんだ…ごめんなさい……」

あっ、と思ったときにはもう遅かった。イチは自分の席になった座椅子に寂しそうに移動して、動かなくなってしまった。

「…イチ…?」

呼びかけてもイチは微動だにせず、座椅子に体育座りのように丸まったまま、初めから動かなかった人形のように固まっていた。

「…もう知らない!本当は人形なんだもん、動かないんだから!!」

私は気にしないようにして食事の支度を始めた。

(平気…私、ずっと一人だったんだもん。動いてた人形が、動かなくなっただけ…。静かな方がいい……)

私は自分に言い聞かせた。相手はこうみえて人形。なら気にすることなんてない。動く、話すが出来るけど所詮…私は心のどこかでずっとそう思っていた。

でも、『傷付く』に決まっている…

私がベッドに入る頃になっても、イチは動かなかった。

「イチ?私、もう寝るね…?…さっきはごめんね…支度もありがと…」
(起きてくれない…。朝になったら機嫌直してくれるかな…?…人形だもんね…人形は普通動かないもん……)

動かなくなったイチを気にしながらも、私は眠りに入った。


ふと目が覚めてイチの指定席をみると…

「…イチ??」

イチがいない。パッと起きて家中を探したがいなかった。鍵はかかっていたのに…

「イチ…!?イチ!!」

まだ朝になったばかりのようだ。周りの家の人達には少し迷惑かもしれない、それでも呼ばずにいられなかった。

「イチ、どこにいったの!?」

私は急いで着替え、支度をして家を出た。

(私のせいだ…あんなこと言ったから傷ついたんだ…!人形だって、イチは意志を持ってるのに…)
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