君と一緒!
「イチ…どこ…!?」

私は必死に探し回ったけれど、朝方の街中に彼の姿は無い。しばらく探していると、

「誰か探しているのかな?」

優しそうなおじいさんがいきなり私に話かけてきた。
私は迷ったけれど、この人に人を探していることを言うことにした。

「え、え〜と……わ、私と同い歳くらいに見える、男の子を探しているんです…!」

おじいさんは優しそうな表情のまま言った。

「…もうあの子は戻らないだろうねえ…。」

「どうしてですか!?」

冷たい言葉と同時に、この人がイチを知っていると確信したとたん、私は思わず強い口調になってしまった。
けれどおじいさんは表情を変えないまま。

「愛されていない、愛さないところに長居は無用だよ?」

「どう…して……」
(愛されて…?私は…イチにどうしたっけ…?イチに冷たくした…人形だし、なんて…)

おじいさんの言葉が心に刺さる。

「あの子の代わりに君には別の『人形』を差し上げよう。恋人代わりになってくれる素敵な『人形』を。」

…そうじゃない、私が欲しいのは、来てほしいのは、新しい人形なんかじゃ…

「…ごめんなさい…ごめんなさい…!!ほかの人じゃダメなんです…!イチに…謝らなくちゃ…。私のとこなんかもう帰って来たくないかもしれない…それならもう仕方ない…でも、人形だからなんて思って、冷たいこと言っちゃった…謝りたいんです…!お願いします…イチのいる場所を知っているなら教えてください…!!大事な家族なんです…!!」

気づくと私は泣いていた。
次の場所が決まるまでなんて言っていたのに、すっかりイチがいる生活に馴れていたから…。
夜にも朝にも子犬みたいに懐いてきて、小さい弟と一緒みたいに騒がしく会話してやりとりして、なんだかすごく楽しかったから…

「謝らなきゃ…またイチに会いたい……」

私が思わず呟くと、おじいさんは静かな声で言った。

「…目覚めるかな…?3日ほどで目覚めなければ、あの子は君の元からいなくなる……」

おじいさんの言った意味がよくわからず、瞬きのうちに、その姿は消えた。

「え…!?」

おじいさんはもう近くにもいなかった。
イチがどこにいるのか知っていたかもしれないのに…

「…帰ろ…イチ、帰ってきてくれたかもしれない…」

私はおじいさんの言った意味も気がかりで、重い足取りで家に向かった。
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