君と一緒!
「…っ……」

「あ…」

気づくと彼は悲しそうに顔を背け、ポツリと呟いた。

「…言えないよ…でも、役に立ちたいんだ……役に立たなかったら…僕は……」

「…あぁ、もう…!!」

私は彼の話を信じ始めてしまい、あろうことか彼の悲しそうな様子を見て、うちに少しのあいだ置いておく気になってしまった。

「…私、サギに引っかかりやすいのかも…。…証拠!」

「え?」

彼は私のキッパリとした声に、顔を上げた。

「あなたが人形である証拠を見せて!それから、私や周りに害をなさないって誓ってくれる?そうしたら考えてみる!」

彼はパッと嬉しそうに笑った。

「証拠を見せればいいんだね?僕が人形な証拠はね…ハサミを貸して?」

「…ハサミ??」

私はまだ警戒し、訳が分からないながらも、凶器になり得るハサミを恐る恐る渡した。
すると彼はいきなり、自分の腕にハサミの刃を当て、スッと滑らせる。
私は思わず叫んだ。

「きゃ!!何してるの!?」

「え?証拠を見せたいんだよ。見て?」

彼は何でもないというような相変わらず穏やかな様子でそう言って、先ほどの自分で切った箇所を私に見せた。

「や、やだ…!…え…??」

顔を反らした私だったが、瞬時に、普通では信じられないものを見た。

「…切ったとこ…血が出てない……っていうか、皮膚が……」

普通ハサミでケガをすれば、皮膚が多少えぐれて血が出てくるはず。
ところが彼のハサミ跡は、結構深く切っていたようなのに全く傷痕らしくなく、木の板やスポンジをハサミで切ろうとした跡みたいで、全く血なんか出ていない。
しかも彼は平然として、さっきと同じように穏やかなまま、全く痛がっている様子はなかった。

「人間と違うでしょ?僕、傷は痛くないんだ。血は出ないんだよ、無いからね。」

私は見てうなづいた。

「…う〜ん、人間じゃないことは…分かった!とりあえずバンソウコーを貼っといて」

「よかった!あとは……」

彼はフローリングに膝を付いて、私をまっすぐに見て言った。

「君の痛いことはしないよ、嫌がったらすぐ止めるし、君の手伝いもする。だから、僕を使って?」

使う、という言葉が、まっすぐ私の心に響く。

(人形だから、かな…。役に立ちたいって、自分を使ってほしいって思ってるんだ…。この人形が何でここに来たのかもわかんないけど、少しだけ様子を見ようかな…)
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