君と一緒!
「…お金、払えないよ?あとで高いお金請求されても。」

一人暮らしでバイト学生の私。
こんな質の良い、動く人形をもしレンタルするなら、相当な値段が掛かるはず。

「??人形はお金はいらないよ?食べ物もいらないよ?」

のんびり屋な彼。
それでもはっきりしておかなければいけないことなので、私はしつこく聞いた。

「そうじゃなくて、あなたをここに送った人が後で来て、私に払えって言っても。」

「そんなことしないよ?」

「あなたの主人が詐欺じゃないって誓える?」

「サギ?主人??誰も君からお金をもらったりしないよ?」

少し考えて、私の心は決まった。

「……分かった。あなたを少しのあいだ、この家に置くね。」

「本当!?」

「あ、あなたの次の行き場が決まるまでよ?あと、あなたがここに来た理由、そのうち教えて。あなたも『約束』とかいうのがあるって言うから今はいいけど…」

「うん!」

彼は嬉しそうに笑った。

そして、当然のように私に抱きつこうとする。

「きゃ!何!?」

「僕、頑張って君の役に立つよ!さ、抱きしめてあげるからね!」

「ま、待って!!しなくていいの!」

「??」

純粋に訳がわからないという感じの彼に、私は考えながら懸命に言った。

「え〜とね…他の人でそういう人がいるかもしれないけど、私はね、好きな人にされないと嫌なの!」

「僕を…君が好きにならないとだめ?僕は君が好きだよ?」

「まあ…恋人、になって、相手としたいと思わないと、私は嫌、かな…」

私はなんとなく気恥ずかしいと思いながら、なんとか彼に自分の意思を伝えた。

「そっか…僕と恋人になって、してほしいと思ってもらえるようにしなくちゃ…!」

張り切る彼を私の上から下ろすと、私は近くの座椅子を指差して言った。

「あなた、人形なら寝なくても大丈夫よね?あそこはあなたの指定席ね。私が寝るときは、あの座椅子で休んで?」

「え?え?君の体、温めなくていいの??」

本気でうろたえているであろう彼に私は説明した。

「あのね、私はあなたを布団代わりにする気はないの。…恋人同士でもないしね…。今日は肌寒いけど、この布団はそんなに安物じゃないから私は寒くないし。」

「うん、分かったよ。寒くなったら言ってね。」

彼は納得してくれたようで、座椅子に向かっていった。私はそれを見届けてからベッドに寝転ぶと、そのまま眠りについた。
< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop