君と一緒!
朝、いい香りがして目が覚める。

(…え…何??)

寝ぼけた私が起き上がると、昨日の人形だと言う彼がそばに寄ってきた。

「え〜と…ご主人様?おはようございます。朝食が出来ました。…と言いましても、卵を焼き、野菜を切っただけですが。」

「え?え??」

何が起きたか分からない私は混乱する。

「僕は味見ができませんので…」

彼は少しすまなそうにした。

「え、違う違う!なんで、私がご主人様になっちゃうの!?」

「??お名前を存じておりませんので…」

「しかも昨日と喋り方まで変わってるのはなんで!?」

昨日までちゃんと普通の言葉で会話していたはず。私はうろたえる。

「名前がわからなければご主人様とお呼びする他なくて、それに準ずる話し方に…」

「昨日と同じにして!私はあなたの主人じゃないの!私の名前は光崎美桜!ミオって呼んで良いから!」

彼はすごく嬉しそうに笑った。

「ミオ…!うん!卵を焼いて野菜を切ったよ!味付けをして?」

私はやっと落ち着けると息をついて、

「わかった。」

と言った。


「あなた上手に焼いたね、卵。誰に習ったの??」

「ご主人様が教えてくれたんだ。味付けは、僕は人形で味見ができないから、料理を手伝うならせめて、うまく火を通しなさい、って!」

私は焼いてくれた目玉焼きに塩コショウを振り、サラダにドレッシングをかけてパンと食べながら、彼の話を聞いていた。

(う〜ん…彼、人形らしくないし、だからって人間とも違うし…でも人形??しかも人間の手伝い用の人形として作られたんじゃないみたい…。じゃあ、どうして動けるんだろう?何のために作られたんだろう??)

「ミオ、今日は何をするの?」

「…あ、今日は学校は休みだしバイトもないけど、買い物に行くから。」

「僕も行きたいよ!ミオがいつも何してるか知りたい!」

「え…大丈夫かな…あなたを連れて……あ。」
(名前くらい無いと不便だろうな…何かいい名前を…)

私はさんざん悩んだ末に彼を「イチ」と呼ぶことにした。

(あぁ…ネーミングセンスが……)

「イチ?嬉しいよミオ!ありがと!」

名前を教えると、彼は喜んでくれたようだ。そして嬉しそうにしながら私の手を引いた。

「さ、行こうよ!」

「ま、待って!あなたはいいかもしれないけど、私は着替えてすらいないんだから!」

支度を済ませ、結局イチを連れて外に出かけることになった。

(ま、イチ一人で家においといて、何かあったら困るもんね…。)
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