君と一緒!
私は銀行や、日用品や何日分かのご飯の材料の買い出しを、事細かに質問攻めにしてくる彼を連れながら済ませた。


「…イチ、あなた何も知らないのね。あなたの言うご主人様は、そういうことをしなかったの?」

「しないよ?お手伝いさんたちがしてくれてるからね。」

(本当に『ご主人様』だったのかも……。さっきの話し方も、きっとそのお手伝いさんのマネだわ…。そんなところにいたイチが、なんでうちに来たんだか……)


全部済むと、特に一緒に何かを食べられるわけでもないイチと一緒のため、ファーストフードに寄り道することもなく家に戻った。

(一緒に食事とかできるんなら良かったのに…)

仕方なくそのまま帰ってきたが、私はいつもより今日一日、たくさん喋っていたことに気づいた。その途端、どっと疲れが出たらしい。

(…喉…乾いた…。疲れた……イチがしょっちゅう話しかけてくるから…。まさか休みでこんな…)

「ねえミオ、僕何か手伝いたい!」

私はグッタリしながら言う。

「…私もう疲れた…!!じゃあ…イチはお風呂洗うの、出来る?」

イチは笑ってうなづくと、洗剤とスポンジを私に見せて確認し、浴室の掃除に向かった。私はグッタリとソファに寝転ぶ。

(『ご主人様』のとこの『お手伝いさん』に習ったのかな…。まあ良いや、疲れちゃったからイチに任せよ……)

そのままウトウトし始めた頃、肩をそっと叩かれて気が付いた。

「あ…イチ……」

イチは穏やかに笑いながら飲み物を差し出して言った。

「さっき買ってきたお茶を冷やしたよ。飲んだらミオ、お風呂が沸いたから入ろ?」

「え…うん…ありがと…」

まだ半分寝ぼけたまま私は返事をして、渡してくれたお茶を飲み、バスルームに向かった。


(まぁでも、今日は結構楽しかったかも…)

身体を洗いながら今日一日を思っていると、いきなり浴室の戸が開いた。

「ミオ〜、背中洗いにきたよ〜」

何も着けない後ろ姿の私は顔だけ振り返ったまま、驚きすぎて、隠すのも叫ぶのも忘れて絶句した。

「寒くない?ミオ…
「っ…ばかァァァァ!!」

イチののんびりした声を聞き、私はやっと叫んだ。

「出てって、出てってえ!!」

急いでそばにあったバスタオルをたぐり寄せる。

「え…?え??」

全く分かっていない様子のイチ。

「見ないで〜〜!!」

私はタオルを体に巻き付けたままイチを追い出そうとしたが、ピクリとも動かない。イチは訳がわからないというように首を傾げて立っている。
私はなんとかイチを後ろ向かせ、肩を押さえて見られないようにした。

「人形とはいえっ…お風呂っ…いきなり……しかも女性の…」

もう、ちゃんとした言葉にならない。

「問題ないよ?」

イチは無邪気に笑っているようだ。

「ダメ〜!ダメなの、ダメ!!私は見られたくないの〜!!…きゃっっ!!」

私は足を滑らせて倒れそうになった。

「ミオ…!」

イチは私に素早く向き直り、抱きしめる。
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