君と一緒!
「…!」

「よかった。ミオ、僕は役に立った?」

イチは微笑んで私に聞いた。

「え…うん…ありがと…」

私はまだ恥ずかしさと驚きでドキドキしたまま下を向いていた。

「…わ、私平気だから…ね?イチ…」

「……うん…」

念を押されるとイチは、寂しそうに浴室を出ていった。

(イチは人形なんだから、見られるの気にしなければよかったんだろうけど、見た目は男の子だしなあ…)


お風呂を上がって部屋に戻ると、イチは座って落ち込んでいた。

「まったく、イチは人形っていうより子犬みたいね。お手伝いは嬉しいんだけど…。スキンシップがそんなに好き?」

「ごめんなさい…。ご主人様は、もっとそばにいさせてくれたんだ……」

イチは下を向いて落ち込んだままだ。

「もう…仕方ない、人間をご主人様とかしか接したことないんじゃ…。」

「ミオ…」

イチは遠慮がちに私の膝にすり寄ってきた。

(…!!違う違う、イチは人間じゃないんだから!照れることないんだからっ…!)
「よ、よ〜しよし…」

私は内心まだ混乱しながら、すり寄ってきたイチの頭を撫でる。

「嬉しいよ…」

イチは本当に嬉しそうに笑う。

(まったく私、子犬っぽい人形を手に入れちゃったなぁ……)

イチはいきなり立ち上がり、ガバッと私を抱きしめた。

「ミオ〜!!」

「ひやぁぁ!」
(…っ、犬のぬいぐるみだったら、もっと良かったのかも……)


「ねえねえ、連れてってよ〜!」

朝から元気なイチのおねだり。もちろん私が今日は学校に行くからだ。

「ダメ〜!イチは人形でしょ?人形は学校行かないの!」

「ご主人様はずっとそばにいさせてくれたよ?ずっと一人は嫌だよ〜」

「あなたのご主人様は学校行かなかったでしょ!?」

まるで小さい弟か大事なペットにでも言い聞かせるような自分の説得に、私はまた錯覚を起こした気分だ。

(ほんとにイチは人形だよね…??)
「…じゃあ…イチにはお手伝いをお願いします!」

「お手伝い?」

私はイチに、洗濯物を干す、今晩の料理の野菜を切る、掃除などの手伝いをしていてもらうことにした。

「帰ってきたら、そうね…抱きしめて頭をなでてあげるから!しばらくうちにいるなら慣れてもらわないと。…ちなみに私も…」

「ほんと??きっとだよミオ!」

私にすり寄り寂しそうにするイチを引き剥がし、自分の留守中の注意をイチにありったけ教えて家を出る。

「あと、そこの棚には触らないでね?ほんとに、気をつけていい子で待ってるのよ?」

「いってらっしゃい!頑張るよ〜!!」

悲しそうに私に手を振るイチ。

(ほんと〜〜にイチは人形なんだよね??)
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