君と一緒!
学校の講義に頭がいかない。どうしてもイチのことを考えてしまい、何度も帰って様子を見ようと思った。

(あぁもうダメ…!イチが心配!)

私は学校が終わると、課題をさっさと終わらせ、友達の誘いも断って急いで帰った。
いつもは帰っても一人なので、バイトが休みでも急いでなんて帰らない。でも今日は、留守番をさせたイチが気がかりだった。


急いで鍵を開け、ドアを開けるとイチが飛びついてきた。

「ミオ〜!寂しかったよ〜!」

「きゃあぁ、重いよイチ!背が高いんだから!!」

すり寄ってきたイチをなんとか引き剥がし、上から下までまじまじと見つめた。

「痛みがないって言うから…ハサミで体に傷つけても痛くないくらいでしょ?留守番で傷が付いて無いか…あとは…」

イチに傷が無いのを確認し、次は部屋中を見て回った。

「約束通り、あの棚には触ってないみたいね、良かった…。あとは…うん、キレイ!掃除も洗濯も上手いじゃない!」

私が褒めると、寂しそうにしていたイチが笑顔に変わった。

「ミオ、ミオ、僕上手??約束だよ、抱きしめて頭をなでて!」

(あ…しまった…そんな約束…。でも、イチは人形だし、子犬みたいだし……)

イチはじっと立って、私からのスキンシップを待っているようだ。

(イチは人形…イチは人形…子犬っぽい人形なんだから…!)
「や、約束だもんね…はい、ハグ!」

私は思い切ってイチを抱きしめた。そして、私より背の高いイチの頭をそっと傾けて頭をなでた。

(好きな人がいるのになあ…。いや、イチは人形、子犬…弟みたいなもの……)

私は、自分の気持ちを割り切れる言葉を探しながら、ひたすらイチの頭をなで続けたのだった。


「私も安心してイチを置いて出かけられそうね!」

私の安心しきった言葉に、イチはすぐさま反応する。

「一人は嫌だよ、ミオがいないと嫌だよ〜。」

「学校とかバイトにイチを連れていけないでしょ。イチは留守番出来るんだから留守番!」

「やだよ〜。」

「イチはいい子でおるすばんして!」

「ミオ〜…!」

まるで姉と幼い弟のような会話だ。

「…また頭をなでてハグしてあげるから!」

私の言葉に、イチは少し考えるような仕草をしてから頷いた。

「わかったよ〜。」

一通りのやり取りを終えると、私はやっと一息ついた。

(弟かペットだと思えば、そのくらいは…。にしても、一人のときよりなんだか楽しい、かも…イチが来てから…)

私はそのあと、イチが用意してくれた具材でゆっくり夕食を作り、お風呂に入った。
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