悪魔が気に入るお飾り人形!
「着られないのか??じゃあ俺がっ!」

「そ、そうじゃなくて……」
(普通の服を着せてもらえると思わなかった…)

「??…アイツは、それがおかしくないと言ってたんだけどなぁ…」

「アイツ……?」

「ああ、人間界に来たばっかの時に仲良くなった、俺が世話になってる魔女。人間界にもけっこう魔女の仲間がいるらしいんだ。まあ、あの種族は自由だからな。」

「……。」
(魔女さんもいるんだ…)

「人間と散歩するには、そういうのを着せろ、ってさ。首輪代わりももらってきたぞ!」

ほら、そう言われて見せられたのは、かわいいネックレス。涙の形をした、青くて小さい宝石みたいなのがついている。

「…キレイ……」

「人間用のオマモリ付き、なんだとさ!」

「御守り、のこと……?」
(どういう意味だろう……)

「ほら、さっさと着て行くぞ〜!着れないなら俺が…」

「…着られます〜……」

「じゃあさ、首輪は俺がしてみたい!」

レイさんは私にネックレスを嬉しそうに見せびらかすと、私の後ろに回った。

「え…あの……」

胸がドキドキした。
私の首すじをレイさんがそっとなぞって、冷たい金具が肌に触れた。

「あ……」

「っと…よし!うまいもんだろ!さ、着替えて来いよ〜?俺が着替えさせたら…我慢出来なくなっちゃうからさ!」

「は、はい……!」
(なんで…?まだドキドキしてる…でも、早くしないと…)

私は隣の部屋に行き、まだ胸が高鳴ったまま、おぼつかない手で着替えを始めた。


「よし!しっかり掴まってろよ〜!」

レイさんは私を横抱きにすると、しっかり自分の身体に寄せて腕で包み込んだ。

(あったかい…)

私はその安心感みたいなものと心地良さに、そっと目を閉じた。

「どこに行くかは決めてあるからな?散歩コース、なんてものはまだ無しだぞ〜?」

「はい…。」

彼の黒い翼は夕日に照らされて光っていた。


「ホタル〜、着くぞ?こっからは人間達から見えるようになるからな!」

「は、はい…」

大きな街。そのビルや店が建ち並ぶの隙間に、誰かに見つからないようにこっそり降り立った。

「お前はのんびりした町の育ちだったみたいだけど、こんな場所でもいいだろ?犬とか猫みたいな、仲良くならないと言う事聞かない奴らと違って、お前なら平気だろうしな!じゃ、ちょっと待ってろ〜?」

そうレイさんが言うと、翼は消え、目は赤から次第に黒っぽく変わった。

「目…」

「ああ、明るいとこ行くとバレるだろ?目の赤い人間はほとんど無いらしいからな。」

彼は自分の格好を黒のスーツ姿に変えた。
私はその間、周りを見渡してみた。そばのビルの隙間から、テレビで見覚えがある駅のシンボルが見える。
オシャレな店がたくさんあるって言われている街。私なら一人では絶対に来なかった場所…。

「よし、行くか!」

「あ…」

レイさんは私の手をとって、繋ぎ直した。

「人間同士なら平気なんだろうが、俺はリードも無いからな。掴んでおく。」

「は、はい…!」

こうしてレイさんとの初めてのお散歩が始まったんだけど……
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