悪魔が気に入るお飾り人形!
〜 エピローグ 〜 生まれ変わった二人の道
今日はレイさんが『人間』として生きていくことになる日。

「準備はよろしいでしょうか、レイ様?」

「ああ…お願いするよ…」

戸籍に、家に、他にもたくさんやらなきゃならないことがある。
いろんな保証と、レイさん自身の保証人を、クォーツさんに頼むことになった。

レイさんがこの世界で生きていくために…

「レイさん……」

いつの間にか不安そうな顔になっていたみたい。レイさんは私の頭を、いつものように優しく撫でてくれた。

「心配すんなって…俺はお前と生きるって決めたんだから、なっ?」

「うんっ…!」

私の返事を聞いてレイさんは優しく頷いたあと、ゆっくり目を閉じた。

〜〜

「レイさんっ…!」

私はレイさんにすぐに駆け寄った。

「ホタル……俺、平気だよ……魔力、もう無いんじゃないかな…使い果たした…」

疲れた感じだけど、私を見て笑ってくれるレイさん。私は優しく抱き締める。

「…ホタルの癒やしの力は、魔族じゃなくなっても効くんだな…」

「おめでとうございます、レイ様!ご覧になって下さい、ホタルさんと同じ、黒っぽい瞳ですよ?」

レイさんはすぐに鏡を見て、満足そうにした。

「ありがと。…魔力を使わないほうが、やっぱりキレイな色になるなぁ。」

「レイ様とホタルさんのご自宅は、私の管理するマンションにそのまま移動してあるはずですから、後で確認に参りましょう。…しっかりと、防音は整っていますわ。」

クォーツさんは茶目っ気たっぷりにウインクした。


すべて確認が済んで、クォーツさんの管理マンションに着いた。

「こちらですわ。」

「わぁ…本当に、そのまま…!」

二人でご飯を作るキッチン、二人で入るバスルーム、二人で眠るベッド……その全部がそっくりそのままマンションに移動していた。

「ありがとうございます、クォーツさん…レイさん……」

私は嬉しくて涙が溢れた。

「ホタル……」

「あらあらホタルさん、泣かないの。……さて、私も久々で、疲れてしまったわ。私も店じまいして、今日は休む事にしましょう。それではレイ様…いえ、レーガンドさん、また明日。」

「あ…はい、また明日…『クォーツ先生』…!」

「クォーツさん、ありがとうございました…!」

クォーツさんは微笑んで、うやうやしく挨拶をすると行ってしまった。

「…レイさん、私、レイさんとずっと仲良く生きていきたいです…!」

「俺も…!愛してるよ、ホタル!」

「私も愛してます、レイさん…!」



自分の居場所を探すためにお城を出たレイさん。
空っぽな毎日を送っていた私。

一人ぼっちを埋めたかったレイさん。
人形にするために連れてこられた私。

今は二人で生きていくために、ここに二人でいる。

今まで自分も辛かったのに、楽しそうに笑うレイさんが私を変えてくれた。

…別の世界から来た人だし、他の人と少し、ズレてたっていい……
私は優しいこの人と、これからを生きるために生まれ変わったんだと思うから……
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