魔族の王子の進む道
王子の帰還と悩み事
「兵士様、本当にありがとうございました…!どうかお気をつけて…」
娘の母親が言う。
「兵士様〜!ありがとうございましたっ!」
娘も言う。
村の者たち皆が、口々に頭を下げ、礼と見送りの言葉を彼に掛けた。
「あぁ。」
「私どもは飛ぶ事は出来ません。申し訳無いのですが、こちらでお見送りさせていただきます。どうかお気をつけて…」
彼は呑気な集落をあとにし、ようやく自らの城に向かって飛び立った。
それからの彼は、見た目にも分かるほど一層、影を背負うように暗くなった。
城の者たちは、半日も帰らなかった彼が戻ると早々に尋ねたが、
「娘は助けた。」
と言っただけだった。
明らかに様子がおかしいのだが、何があったのかも、何かに怒っているのか何かに困っているのかも分からず、何も言わぬ主に何時ものように接するしか無かった。
彼は、娘や小角族の者達が気になって仕方なかった。
要務が終わり一休憩入れるたび、何度も見通しの間に行こうと思った。
しかし、見通しの間は要務の為の場所。自身の興味だけで見るなど、反している気がして気が咎める。
それに、自分が不思議な気分になった、あの一族の村を見てどうするのかなど、理由も目的も思い付きはしない。
モヤ付いた気分を抱えたまま、要務で世界を見渡し直ぐさま部屋を出ることを、彼は数日間繰り返していた。
「王子…何をお考えなのか存じ上げませんが、もっとお気を楽に持たれたらいかがでしょう……?」
家臣が見兼ね、恐る恐る彼に声を掛ける。
「分かっている…!」
彼は苛つきと焦りが入り混じった様子で返す。
家臣はため息を付き、小さな声で愚痴た。
「第二王子様ならば悩み続けるより動く方だというのに、ラインデンド様と来たら……」
「…何か申したか!?…部屋に私だけにしろ、出て行け!」
彼は聞こえていた。
そう、弟だったならば、悩み続けたりはしない。前向きな、あの娘のように自ら行動を起こしたはず。
「……。」
しばらく考えたのち彼は、これは要務だ、と自分に言い聞かせ、見通しの間に入っていった。
娘の母親が言う。
「兵士様〜!ありがとうございましたっ!」
娘も言う。
村の者たち皆が、口々に頭を下げ、礼と見送りの言葉を彼に掛けた。
「あぁ。」
「私どもは飛ぶ事は出来ません。申し訳無いのですが、こちらでお見送りさせていただきます。どうかお気をつけて…」
彼は呑気な集落をあとにし、ようやく自らの城に向かって飛び立った。
それからの彼は、見た目にも分かるほど一層、影を背負うように暗くなった。
城の者たちは、半日も帰らなかった彼が戻ると早々に尋ねたが、
「娘は助けた。」
と言っただけだった。
明らかに様子がおかしいのだが、何があったのかも、何かに怒っているのか何かに困っているのかも分からず、何も言わぬ主に何時ものように接するしか無かった。
彼は、娘や小角族の者達が気になって仕方なかった。
要務が終わり一休憩入れるたび、何度も見通しの間に行こうと思った。
しかし、見通しの間は要務の為の場所。自身の興味だけで見るなど、反している気がして気が咎める。
それに、自分が不思議な気分になった、あの一族の村を見てどうするのかなど、理由も目的も思い付きはしない。
モヤ付いた気分を抱えたまま、要務で世界を見渡し直ぐさま部屋を出ることを、彼は数日間繰り返していた。
「王子…何をお考えなのか存じ上げませんが、もっとお気を楽に持たれたらいかがでしょう……?」
家臣が見兼ね、恐る恐る彼に声を掛ける。
「分かっている…!」
彼は苛つきと焦りが入り混じった様子で返す。
家臣はため息を付き、小さな声で愚痴た。
「第二王子様ならば悩み続けるより動く方だというのに、ラインデンド様と来たら……」
「…何か申したか!?…部屋に私だけにしろ、出て行け!」
彼は聞こえていた。
そう、弟だったならば、悩み続けたりはしない。前向きな、あの娘のように自ら行動を起こしたはず。
「……。」
しばらく考えたのち彼は、これは要務だ、と自分に言い聞かせ、見通しの間に入っていった。