魔族の王子の進む道
謎の客
「王子様が身を散らした、ただ一匹の低魔族の娘ですよ〜!?散らされた後捨てられた、憐れな娘!!希少価値が高いのは言うまでもありません!それに加え、明るくハツラツとした丈夫な身体!!純真無垢な心!!穢して楽しむも良し、弄び続けるも良し!最高の奴隷として貴方様のお側に置けますこと、間違いないでしょう!!」

いつもは呑気な娘も、今回ばかりはとても嫌な予感がした。

「助けてぇ…!誰か…!!」

ニヤ付いた魔族達は品定めするように娘を眺め、誰として手を貸そうとはしない。


その時、舞台にいきなり男がスッと現れた。

「お客様!奴隷に触れてはいけません、大切な商品ですから…!!」

赤い衣装に仮面を付けたその男が鋭い眼光で周りを見渡すと、周りの者たちは後退った。
男はそのまま娘にそっと触れる。

「う…」

娘は反射的に、動かない身体で身構えたが、男は娘の頬に優しく触れた。

「確かに良さそうな娘だ。頭はあまり良くないようだがな。…主催の者だな?本当にこの娘を、王子は捨てたのか…?」

進行役の男は、突然現れた男に怯みながらも答えた。

「は、はい…娘を慰み物につかい、その後追い出したと聞いています……」

「王子様は、捨てたりなんかしないですっ!!本当は優しい王子様なんだもん!!」

突然勢いよく言い返した娘。そばにいた男は苦笑した。

「なんという娘だ…怯えていたと思えば、王子は優しいだと…?」

「優しいですっ!それに、王子様があたしをああしたのは、ずっとそばにいて、って意味です!!母さんがそう言ってました!好きな人に、そばにいて欲しい、って意味だって!!そうした時は、誰にも言っちゃいけないって!!…あ、言っちゃった……」

「…そうだったか…!…お前というものは…」

男は娘の話に、納得したように頷いた。

「ゼラ!!」

娘の母親が、城の兵たちと共に会場に飛び込んできた。すぐさま母親は娘のそばに駆け寄る。

「母さん…!!」

母親とともに来た副隊長は周りを鋭く見渡した。

「お前たち、何をしている!!奴隷など、魔族同士の売買は、前国王の頃から禁止されているはずだ!!」

「待て!!」

娘のそばにいた男はそう周りに言うと、娘の腕の鎖に触れ、瞬時に外した。娘は驚き、彼を見つめた。

「え…?兵士様?…王子様ぁ…??」

男は兵士の姿に変わっていく。

「…兵士様……!!」

娘と母親は、すぐそばにいた貴族姿の男が見覚えのある相手だったことに驚いた。

「何!!?」
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