魔族の王子の進む道
王子様の武勇伝
「兵士様はね〜、王子様だったんだって!」

「そ〜なんだ〜!!」

「すごかったんだよ〜?悪い貴族様だったのをね、王子様が、貴族様のかっこうと兵士様のかっこうして、ババ〜ッとつかまえたんだよ!!」

「すご〜い!!かぁっこい〜!」

集落に戻った娘は子供らの前で、王子の取った行動をかなり端的に自慢をした。

「こうやってね…!モクモクモク〜…」

娘は、王子の変身の真似なのか、表情を引き締め格好つけた。黒い霧が出るさまを片手をフワフワ動かして表しながら、姿が変わる様子はもう片方の手を、

「バサァ〜!!」

と言いながら、自分の身体の前で振りかぶってみせた。

「わぁぁ!!」

娘の語る事を、子供らは目を輝かせながら聞き入る。

「…お前は……。恐ろしくは無かったのか…??」

そばで見ていたさすがの彼も、呆気にとられたまま尋ねた。娘は呑気な笑顔で返す。

「だって、王子様が助けに来てくれましたから!!みんなに会えなくなるのは嫌だから、嬉しかったです…!!」

娘の真っ直ぐな言葉に、やけにこちらが何だか照れてしまい、彼は後ろを向いた。

「…そうか。」

「??」


彼は少しして娘の目の前に立ち、頭を下げた。

「…悪かった……。お前を無理矢理城に押し込め、痛い思いをさせたうえ、出て行けなど…。弟を森まで探しに行った礼も、私のために宴を開いた礼も、まだしていなかった……。」

「大丈夫です!!王子様が元気になったなら良かった!」

「…ゼラ……」

「そうだ…王子様、弟の王子様は…」

そう言われ、彼はやっと、自分以外の相手に打ち明ける決心をした。

「…実は……弟は、出て行ったのだ。人間になるのだと言って……。私はそこでも過ちを犯した…。素直に祝福してやるべきだったのだ…しかし……」

彼のいつになく消え入りそうな声は、娘にはしっかり聞こえていたらしい。

「人間!?」

「そうだ…まだ誰にも言っていない……」

それを聞いた子供らも口々に言った。

「ニンゲンてなぁに??」

「別の世界に住んでる生き物らしいよ??」

「……。」

娘は考え込むようにした。そして、

「弟の王子様に、会いに行けたりしますか??」

そう、彼を真っ直ぐに見て言った。彼は唐突なその言葉に面食らった。

「?…奴はもう、こちらに来ることが出来ないはずだが…私であれば……」
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