【短】偽物lovers2 side矢野くん〜本当の恋人になりたかった〜
偽物lovers side矢野くん






幼なじみの彼女のことがずっと好きだと思っていた。



物心がつく頃から彼女と一緒にいた。彼女と一緒にいると楽しいし、心地がいい。
これこそが誰かを好きになることだと思っていた。

彼女との関係に変化など求めていない。だから俺は高校生になっても彼女との穏やかな関係を続けていた。



*****



高校へ入学して半年、そんな俺に偽物の恋人ができた。


放課後、いつものように彼女と他愛のない話をする。楽しくて、そして何よりも幸せな大切な時間。彼女からも俺からも笑顔が溢れる、そんな時間。

彼女は俺を異性として見ていない。だがそれでもよかった。彼女と一緒に笑っていられるならそれでも。

そんなことを思いながらも幸せな気持ちで彼女と別れると、クラスメイトの吉田さんが俺に話しかけてきた。


「片岡さんが好きなんだね」と。


きっとどこかで俺たちのことを見ていたのだろう。俺は元々彼女への好意を隠しているつもりもないので特に驚くこともなく「そうだよ」と飄々と吉田さんに答えた。


「…片岡さんも矢野くんがきっと好きだよ。だけどそれは幼なじみとしてかもしれない。だから片岡さんに矢野くんを意識してもらおう。矢野くんが恋人を作ってしまえばいいんだよ」


吉田さんが普段クラスでは見せない意地の悪そうな笑みを浮かべる。

それを見て俺は、面白いな、と思った。
正直吉田さんの印象はただのクラスメイトに過ぎなかったがこの時初めて吉田さんの知らなかった部分に触れ、吉田さんという人物にほんの少しだけ興味が湧いた。






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