【短】偽物lovers2 side矢野くん〜本当の恋人になりたかった〜





いつの間にか俺の思考は吉田さんで支配されていて、それに気づいた時、吉田さんへの想いにも気づいた。
そして幼なじみの彼女へ向けていたあの想いの正体も。

幼なじみの彼女のことは確かに好きだった。
しかしあれは家族や大切な人へ向ける〝親愛〟というやつだった。

異性へ向ける〝愛〟というものはあんなに綺麗なものではない。もっとドロドロしていて誰にも見せられないほどのものだ。

本当は吉田さんと本物の恋人同士なりたい。
本物の恋人同士のように人前以外でも一緒にいたいし、キスをしたり、その先のことをしたい。
本当は吉田さんの全てが欲しい。

そう思っていてもしない…いや、できないのは俺たちがあくまでニセモノだからだ。


吉田さんには好きな人がいる。
その事実がいつも俺の心をぐちゃぐちゃに乱した。気が狂ってしまいそうだった。

相手は誰なのか俺の持てる力全て使って調べてみたこともあったが誰なのかわからない。
吉田さんを注意深く観察しても思い当たる人物はいない。

吉田さんの想い人が誰なのかわからないが学校内にいることは確かで。

だからそいつが俺たちの間に絶対に入ろうと思えないように吉田さんとの学校内の関係だけでも一切隙を作らないようにした。

吉田さんは失恋してしまえばいい。
吉田さんの忌々しい想い人には吉田さんは俺が溺愛する彼女だと勘違いさせ、諦めてもらおう。それから新しい恋でもしてもらえれば最高だ。






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