【短】偽物lovers2 side矢野くん〜本当の恋人になりたかった〜
「吉田さんにはもう俺が必要じゃないかもしれないけど、俺には吉田さんが必要なんだ。だから別れられないようにしようと思う」
「ん?」
「俺の下僕…という名のファンはいっぱいいるからね。それも忠実で過激な。だから彼女たちに吉田さんに騙された、遊ばれたと泣くよ。そうすれば吉田さんは次の日から学校には来られないほどの惨状が待っているかもね」
「え、私脅されてる?」
「うん。そうだよ」
絶対に逃がさない。
間違っても吉田さんが俺から逃げられないように自分の持ち得る限り全てで吉田さんを文字通り脅す。
「さあ、どうする?吉田さん」
選択の余地を吉田さんに与えれば吉田さんは数秒間泣きそうな表情で固まった。そんな姿も愛らしい。
俺によってできた濃い影に吉田さんが呑まれていく姿はまるで俺自身に呑まれているようだ。
「正式に付き合ってください!」
「はは、賢いね、吉田さん」
そして吉田さんは涙を目一杯に溜めながら俺にそう叫んだ。
望んでいた答えに俺から笑みが溢れる。
これでやっと終わりのない恋人同士になれるのだ。