【短】偽物lovers2 side矢野くん〜本当の恋人になりたかった〜






「これからもよろしくね、吉田さん」

「うん」

「もう吉田さんは俺の彼女なんだから他の男と話しちゃダメだよ」

「うん」

「…今まで我慢してきた分いろいろしちゃうけど覚悟してね?」

「うん」


心は手に入らなくてもそれ以外の吉田さんの全てならすぐに手に入る。
恋人とはそういうもののはずだから。

俺に囚われ、もう想い人の元へ行けないことを悟った様子の吉田さん。
心ここに在らずなのをいい事に俺は笑顔でどんどんそんな吉田さんに約束を取り付けた。


涙目の吉田さんとそんな吉田さんに微笑む俺。
吉田さんを呑み込んだ影がどんどんその色を濃くする。

今日から俺たちは終わりのない恋人だ。


「泣くほど嫌なんだね。だけど俺は吉田さんをもう離せないから」


愛しているんだ。
例え吉田さんが他の誰かを想っていても吉田さんを手離すつもりなんてない。


心以外の全てだけでも俺に囚われていて。


ああ、なんて可哀想なのだろうか。






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