二人
自業自得
「うちだってずっと一緒におれるわけじゃなかっちゃけんさ」
今更ながら奏音の言葉が胸へと突き刺さる。あの時は、ただ何も考えずに笑い飛ばしていた。
土砂降りの雨の中、家路へと一人歩いている。いつもは隣にいた奏音がいない。二人でお喋りをしながら帰るのが普通で一人で黙って帰っていると、傘を打つ雨音がやたらと大きく聞こえる気がした。
すると、車が私の脇を通り過ぎていく時に、水溜まりの泥水を思いっきり跳ね上げる。その泥水が私の体中へとかかり、驚いた私は持っていた傘まで落としてしまった。
踏んだり蹴ったりである。
頭からつま先まで泥水だらけになった私は、土砂降りの中、傘を拾う事も忘れ、ただ呆然と突っ立ている。そして、こんな時に奏音の事を思い出した。
相合傘で帰る二人の後ろ姿。幸せそうに肩寄せあって歩いていた。
意地なんてはらなきゃ良かった。素直になっていれば良かった。
こんなにも奏音の事が大好きなのに。
胸の奥が締め付けられ、なにか先の鋭利な針みたいなものでちくりちくりと刺されているかの様な痛みも同時に感じる。
苦しいよ……
痛いよ……
なんで……こんなに……
「京香、キャッチボールせん?」
「京香、一緒に帰らん?」
「京香、今度の休み空いとる?」
「これで……離れんやろ?」
「京香、あんたといるとうち、ばり楽しかっちゃん」
あぁ……そうか……
私はこんなにも奏音といた時間が幸せで……奏音が傍にいてくれた事が当たり前で……
それが……終わったんだ……
そして……それが……嫌だったんだ。
受け入れたくなかったんだ……
一人で強くなるって……
奏音の事を考えずに勝手に離れて行った癖に……
自業自得……
ぽろぽろと涙が溢れ落ちていく。
「うわぁぁぁ……」
一度溢れ出すと止まらなくなった涙に、私はとうとう、抑えきれずに声を上げた。
「あぁぁぁ……奏音、奏音、奏音、行っちゃ嫌だぁ……」
激しい雨が私を容赦なく打ち付ける。髪はぺちゃんこになり顔中にはりつき、泥だらけの制服もすっかりびしょ濡れとなり、私の体にまとわりついている。
それでも私は、泣きながら奏音の名前を呼んでいた。呼んでどうかなるわけでは無い事くらい分かっている。しかし、私の気持ちは抑えきれなかった。
「京香っ!!」
とうとう私は奏音に会いたい気持ちが強すぎて幻聴まで聴こえる様になったみたいだ。
それでも……ゆっくりと振り返ってみた。そこには、傘もささずに立っている奏音がいた。
「……大丈夫……やけん……来んで……」
私は素直になろう……そう決めていたはずなのに、こんな姿を見せたくないのもあり、心と裏腹な言葉を口走ってしまった私は、そろそろと後ずさりながら奏音から離れようとしていた。
今更ながら奏音の言葉が胸へと突き刺さる。あの時は、ただ何も考えずに笑い飛ばしていた。
土砂降りの雨の中、家路へと一人歩いている。いつもは隣にいた奏音がいない。二人でお喋りをしながら帰るのが普通で一人で黙って帰っていると、傘を打つ雨音がやたらと大きく聞こえる気がした。
すると、車が私の脇を通り過ぎていく時に、水溜まりの泥水を思いっきり跳ね上げる。その泥水が私の体中へとかかり、驚いた私は持っていた傘まで落としてしまった。
踏んだり蹴ったりである。
頭からつま先まで泥水だらけになった私は、土砂降りの中、傘を拾う事も忘れ、ただ呆然と突っ立ている。そして、こんな時に奏音の事を思い出した。
相合傘で帰る二人の後ろ姿。幸せそうに肩寄せあって歩いていた。
意地なんてはらなきゃ良かった。素直になっていれば良かった。
こんなにも奏音の事が大好きなのに。
胸の奥が締め付けられ、なにか先の鋭利な針みたいなものでちくりちくりと刺されているかの様な痛みも同時に感じる。
苦しいよ……
痛いよ……
なんで……こんなに……
「京香、キャッチボールせん?」
「京香、一緒に帰らん?」
「京香、今度の休み空いとる?」
「これで……離れんやろ?」
「京香、あんたといるとうち、ばり楽しかっちゃん」
あぁ……そうか……
私はこんなにも奏音といた時間が幸せで……奏音が傍にいてくれた事が当たり前で……
それが……終わったんだ……
そして……それが……嫌だったんだ。
受け入れたくなかったんだ……
一人で強くなるって……
奏音の事を考えずに勝手に離れて行った癖に……
自業自得……
ぽろぽろと涙が溢れ落ちていく。
「うわぁぁぁ……」
一度溢れ出すと止まらなくなった涙に、私はとうとう、抑えきれずに声を上げた。
「あぁぁぁ……奏音、奏音、奏音、行っちゃ嫌だぁ……」
激しい雨が私を容赦なく打ち付ける。髪はぺちゃんこになり顔中にはりつき、泥だらけの制服もすっかりびしょ濡れとなり、私の体にまとわりついている。
それでも私は、泣きながら奏音の名前を呼んでいた。呼んでどうかなるわけでは無い事くらい分かっている。しかし、私の気持ちは抑えきれなかった。
「京香っ!!」
とうとう私は奏音に会いたい気持ちが強すぎて幻聴まで聴こえる様になったみたいだ。
それでも……ゆっくりと振り返ってみた。そこには、傘もささずに立っている奏音がいた。
「……大丈夫……やけん……来んで……」
私は素直になろう……そう決めていたはずなのに、こんな姿を見せたくないのもあり、心と裏腹な言葉を口走ってしまった私は、そろそろと後ずさりながら奏音から離れようとしていた。