二人
夏休み
「おらぁっ、京香っ!!もっとしっかり腰落として、きちんと正面で捕らんかいっ!!」
監督である原田の声がグラウンド中へと響く。あれから京香達の学校は県大会初戦を勝利で飾るも、二回戦は僅差で敗れた。三年生達はその試合を最後に引退し、二年生である京香や奏音達が部活を引っ張って行く事となった。
「疲れたぁ……」
早朝から行っていた練習は昼前には終わり、京香達は学校近くのコンビニでアイスを買い、涼みがてらにイートインで食べている。
「ねぇ、奏音……次の練習休みっちいつやった?」
イートインのテーブルで伸びる様にしてアイスを食べている京香が、前の席に座っている奏音へと尋ねると、奏音はぺらぺらと手帳を捲り始めた。
「えぇとね……次の木曜日から一週間。盆休みやって優ちゃんが言っとた」
京香達は顧問であり監督の原田優の事を優ちゃんと呼んでいる。もちろん、本人の前では決して呼ばないが。
「でさ、その木曜日っちゃばってんが、神社の夏祭りになっとる」
「あっ、そげんやったね。どげんすっと、今年も一緒に行くね?」
奏音の言葉にぐいっと食い付いて来た京香。先程までだらりと伸びていた姿勢が嘘の様である。
「そうやね、行こうか。あんたん家に呼び来るけん」
「やったっ!!これで厳しか練習にも耐えれるぅ」
「あんたぁ……ほんとお気軽な性格やね」
奏音はへへへっと笑う京香の頬を人差し指で突っつくと、京香と同じ様にへへへっと笑った。
「よし、今日の練習はここまで。明日から来週の水曜日迄の一週間を盆と言うことで、練習を休みにする。やけんち言うて、だらけた生活は送んなよ?」
監督の言葉が終わると、新部長である奏音が大きな声で挨拶をすると、ほかの部員達もそれに続いた。
「やっと休めるぅ~」
正門を出るやいなや、ぐぐぅと背伸びをしながら京香が大きな声で言うと、奏音が京香の頭をぽんと叩いた。
「ちゃんと宿題も終わらせなんよ」
京香は奏音に叩かれた頭を摩りながら、宿題の事を思い出したのか、うぅんっとしかめっ面になってる。
「……うちら二人で力ば合わせて、宿題ばどげんかせにゃいかんね」
「力ば合わせてって……うちは助けんばい?」
「奏音ちゃん……そげん事言わんでぇ……」
そう言うと京香が甘える様に奏音の腕へと抱きついてくる。
「暑かやんっ!!宿題くらい一人でせにゃ……うちだってずっと一緒におれるわけじゃなかっちゃけんさ」
「嫌やん、ずっと一緒におるよぉ」
京香はふふふっと笑いながら、暑がる奏音の腕へとさらにしがみついた。そんな京香を奏音はやれやれといった様な表情で見ると、京香の頭をわしわしっと撫でてやった。
「ふふふっ。奏音に頭を撫でられるのだぁい好き」
「いかんねぇ……ついうちは京香を甘やかす」
「良いやん、良いやん。もっと甘やかして」
猫なで声で言う京香を振りほどこうと奏音がぶんぶんと腕を振る。振り払われた京香が恨めしそうな顔をして奏音を睨んだ。ぷくっと膨れている頬。奏音がその頬を指でぐりっと押すと、京香の口からぷすっと空気の漏れる音した。
その音に京香と奏音が同時に吹き出した。
蝉の鳴き声にも負けない、二人の元気な笑い声が住宅街の中へと響いていた。
監督である原田の声がグラウンド中へと響く。あれから京香達の学校は県大会初戦を勝利で飾るも、二回戦は僅差で敗れた。三年生達はその試合を最後に引退し、二年生である京香や奏音達が部活を引っ張って行く事となった。
「疲れたぁ……」
早朝から行っていた練習は昼前には終わり、京香達は学校近くのコンビニでアイスを買い、涼みがてらにイートインで食べている。
「ねぇ、奏音……次の練習休みっちいつやった?」
イートインのテーブルで伸びる様にしてアイスを食べている京香が、前の席に座っている奏音へと尋ねると、奏音はぺらぺらと手帳を捲り始めた。
「えぇとね……次の木曜日から一週間。盆休みやって優ちゃんが言っとた」
京香達は顧問であり監督の原田優の事を優ちゃんと呼んでいる。もちろん、本人の前では決して呼ばないが。
「でさ、その木曜日っちゃばってんが、神社の夏祭りになっとる」
「あっ、そげんやったね。どげんすっと、今年も一緒に行くね?」
奏音の言葉にぐいっと食い付いて来た京香。先程までだらりと伸びていた姿勢が嘘の様である。
「そうやね、行こうか。あんたん家に呼び来るけん」
「やったっ!!これで厳しか練習にも耐えれるぅ」
「あんたぁ……ほんとお気軽な性格やね」
奏音はへへへっと笑う京香の頬を人差し指で突っつくと、京香と同じ様にへへへっと笑った。
「よし、今日の練習はここまで。明日から来週の水曜日迄の一週間を盆と言うことで、練習を休みにする。やけんち言うて、だらけた生活は送んなよ?」
監督の言葉が終わると、新部長である奏音が大きな声で挨拶をすると、ほかの部員達もそれに続いた。
「やっと休めるぅ~」
正門を出るやいなや、ぐぐぅと背伸びをしながら京香が大きな声で言うと、奏音が京香の頭をぽんと叩いた。
「ちゃんと宿題も終わらせなんよ」
京香は奏音に叩かれた頭を摩りながら、宿題の事を思い出したのか、うぅんっとしかめっ面になってる。
「……うちら二人で力ば合わせて、宿題ばどげんかせにゃいかんね」
「力ば合わせてって……うちは助けんばい?」
「奏音ちゃん……そげん事言わんでぇ……」
そう言うと京香が甘える様に奏音の腕へと抱きついてくる。
「暑かやんっ!!宿題くらい一人でせにゃ……うちだってずっと一緒におれるわけじゃなかっちゃけんさ」
「嫌やん、ずっと一緒におるよぉ」
京香はふふふっと笑いながら、暑がる奏音の腕へとさらにしがみついた。そんな京香を奏音はやれやれといった様な表情で見ると、京香の頭をわしわしっと撫でてやった。
「ふふふっ。奏音に頭を撫でられるのだぁい好き」
「いかんねぇ……ついうちは京香を甘やかす」
「良いやん、良いやん。もっと甘やかして」
猫なで声で言う京香を振りほどこうと奏音がぶんぶんと腕を振る。振り払われた京香が恨めしそうな顔をして奏音を睨んだ。ぷくっと膨れている頬。奏音がその頬を指でぐりっと押すと、京香の口からぷすっと空気の漏れる音した。
その音に京香と奏音が同時に吹き出した。
蝉の鳴き声にも負けない、二人の元気な笑い声が住宅街の中へと響いていた。