二人
体育祭実行委員
あっという間に夏休みも終わり二学期が始まった。九月になったとはいえ残暑厳しく、また、夏休み明けすぐのHR。クラス内の生徒達がだらけ切っているのがわかる。
「お前らいい加減にせんかっ!!今から、十月に行われる体育祭の実行委員を決めるんやぞっ!!」
教室の空気がびりびりと震えるほどの大きな声で担任でありソフトボール部顧問の原田が怒鳴る。その一言で教室中の生徒達の姿勢が良くなった。
「男女各一名ずつ決める。立候補するも良し、推薦されるのも良し」
教室中が静まり返っている。誰もやりたくないのだ。じろりと生徒達、一人ひとりの顔を見ている原田から、生徒達が俯き視線を逸らす。
「立候補はおらんか。なら推薦は?」
ざわざわと教室が騒がしくなる。そんな中、京香が少し離れた席の奏音へ目配せをする。奏音もそれに気がついたのか苦笑いで返した。
「なんやお前ら、立候補も推薦もなしかぁ?なら、こっちで勝手に決めんぞ」
原田はそう言うと、黒板に向かい勢いよく男女二人の名前を書いた。男子はサッカー部に所属している河原。女子は……奏音の名前が書かれた。
しかし、京香も奏音も驚きはしなかった。
事前に原田より、立候補も推薦もなかった時には、奏音に決めていると話しがあっていたからである。
実行委員は原田の選出した生徒で決まった。
それからの奏音は実行委員の会議や準備などで京香と一緒にいる時間がなくなっていた。そんな事もあり京香も一人で登下校する日があった。
「ごめん……京香。今日も先に帰っといて」
とある月曜日、この日はノー部活デーと言う事もあり、部活もなく下校の準備をしている京香の元へ奏音が走りよって来た。
「ううん、しょうがないよ。私は大丈夫やけん、奏音はしっかりと実行委員ば頑張ってきて」
にこりと微笑み返した京香は席を立ち上がり、小さく手を振るとじゃあねと教室から出ていった。教室から一人で出ていく京香の後ろ姿を奏音が少し寂しそうに見送ると、もう一度、ごめんねと呟くような小さな声で言った。
体育祭も近づいてきた頃には、会議や準備も大詰めになってきており、奏音が部活にも顔を出せない日々が続いた。
「ねぇ、知っとる?京香のクラスの実行委員の男子……ほら、サッカー部の……名前、何だっけ?」
京香がキャッチボールをしていると、隣にいた絵理子がこそっと話しかけて来た。
「河原くん?」
「そう、その河原。随分前から奏音ば好いとったらしくてさ、体育祭が終わったら告白するっち噂ばい」
奏音と同じ実行委員で、サッカー部の河原くん。
見た目も格好よく、優しくて、サッカーも上手くて、女子からも人気である。そんな河原くんが奏音の事が以前から好きだと言うのは、京香にとっても初耳だった。
「もしも、二人が付き合ったらどげんする?」
「どげんするって……どげんもせんよぉ。邪魔せん様にするだけ」
「京香と奏音はいつも一緒やけん、そげんなったら寂しかね」
「しょうがなかよ……」
京香と絵理子が話しをしながらキャッチボールをしていたのを原田に見つかり、こってりと説教をされてしまった。
「お前らいい加減にせんかっ!!今から、十月に行われる体育祭の実行委員を決めるんやぞっ!!」
教室の空気がびりびりと震えるほどの大きな声で担任でありソフトボール部顧問の原田が怒鳴る。その一言で教室中の生徒達の姿勢が良くなった。
「男女各一名ずつ決める。立候補するも良し、推薦されるのも良し」
教室中が静まり返っている。誰もやりたくないのだ。じろりと生徒達、一人ひとりの顔を見ている原田から、生徒達が俯き視線を逸らす。
「立候補はおらんか。なら推薦は?」
ざわざわと教室が騒がしくなる。そんな中、京香が少し離れた席の奏音へ目配せをする。奏音もそれに気がついたのか苦笑いで返した。
「なんやお前ら、立候補も推薦もなしかぁ?なら、こっちで勝手に決めんぞ」
原田はそう言うと、黒板に向かい勢いよく男女二人の名前を書いた。男子はサッカー部に所属している河原。女子は……奏音の名前が書かれた。
しかし、京香も奏音も驚きはしなかった。
事前に原田より、立候補も推薦もなかった時には、奏音に決めていると話しがあっていたからである。
実行委員は原田の選出した生徒で決まった。
それからの奏音は実行委員の会議や準備などで京香と一緒にいる時間がなくなっていた。そんな事もあり京香も一人で登下校する日があった。
「ごめん……京香。今日も先に帰っといて」
とある月曜日、この日はノー部活デーと言う事もあり、部活もなく下校の準備をしている京香の元へ奏音が走りよって来た。
「ううん、しょうがないよ。私は大丈夫やけん、奏音はしっかりと実行委員ば頑張ってきて」
にこりと微笑み返した京香は席を立ち上がり、小さく手を振るとじゃあねと教室から出ていった。教室から一人で出ていく京香の後ろ姿を奏音が少し寂しそうに見送ると、もう一度、ごめんねと呟くような小さな声で言った。
体育祭も近づいてきた頃には、会議や準備も大詰めになってきており、奏音が部活にも顔を出せない日々が続いた。
「ねぇ、知っとる?京香のクラスの実行委員の男子……ほら、サッカー部の……名前、何だっけ?」
京香がキャッチボールをしていると、隣にいた絵理子がこそっと話しかけて来た。
「河原くん?」
「そう、その河原。随分前から奏音ば好いとったらしくてさ、体育祭が終わったら告白するっち噂ばい」
奏音と同じ実行委員で、サッカー部の河原くん。
見た目も格好よく、優しくて、サッカーも上手くて、女子からも人気である。そんな河原くんが奏音の事が以前から好きだと言うのは、京香にとっても初耳だった。
「もしも、二人が付き合ったらどげんする?」
「どげんするって……どげんもせんよぉ。邪魔せん様にするだけ」
「京香と奏音はいつも一緒やけん、そげんなったら寂しかね」
「しょうがなかよ……」
京香と絵理子が話しをしながらキャッチボールをしていたのを原田に見つかり、こってりと説教をされてしまった。