二人
もう頼らない
 奏音が河原から告白された。

 私はその日の夜に絵理子からのメッセージで知った。ショックだった。奏音が告白された事にではない。その事については、少し前に絵理子からそんな噂を聞いていたからだ。ショックだったのは奏音が何も言ってくれなかった事についてだった。

 何も私に全てを教えてくれとは言わない。

 以前、そんな恋の話しがあった時は教えあおう、隠し事はなしにしようと約束したはずなのに……

 とっくに忘れているんだろうな……

 枕に顔を埋め大きなため息を一つつく。

 否、違う。

 奏音は私に気を使ったんだ。私が奏音にべったりで、今まで頼りすぎていたから……

「私は奏音に依存し過ぎてるんだ」

 奏音にとって私は大勢の友達の中の一人だろう。しかし、私は他に友達は少なく、奏音に頼りすぎている事に気がついた。

 そうだ……私だって一人で大丈夫って事を、奏音に知ってもらわなきゃ、奏音が河原くんと付き合っても、絶対、私へ今回の様に気を使ってしまうだろう。そんなのは駄目だ。そうなると私は二人の邪魔者でしかない。

 私は明日から奏音と離れ、他にも友達をたくさん作ろうと誓った。

 そして、朝が来た。

『京香、遊ばん?』

 起きて朝食を食べている最中に奏音からメッセージが来た。今日は体育祭の振替休日で学校も部活も休みである。いつもなら奏音と遊ぶんだろうけど、私は愛美と遊ぶ約束をしていた。

『ごめん、愛美と約束しとるけん』

 奏音のメッセージにそう返信する。そして、奏音からすぐにメッセージが来た。

『分かった。久しぶりに京香と遊びたかったけど残念』

 私はそれに返信せずに携帯を閉じると、少し心の中が《《ちくり》》とした。でも、これで良いんだ。奏音に早く一人でも大丈夫だって認めてもらうんだ。

 口の中に押し込むように食パンを詰めると、むせ込みそうになりながらも、コップの中のココアを流し込む。

「京ちゃん、今日は奏音ちゃんと遊ぶん?」

 キッチンから顔を出した母が尋ねてきた。それにふるふると首を振る。

「うんにゃ、今日は愛美と遊ぶ約束しとる」

「へぇ……奏音ちゃん以外と遊ぶなんて珍しかね」

 母が少し驚いた様な表現で私を見ている。母の中でも私と奏音はセットなんだろう。小学生低学年の時から付かず離れずでべったりの二人だったから、それもしょうがないのだろう。

 私はご馳走様をすると、これ以上何か言われるのが嫌だったので、そそくさと部屋へと戻った。
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