中島くんは私を離さない
昨日決まった花火大会。
花火といえば浴衣だから久しぶりにタンスから浴衣を出してなんとか一人で着付けをして集合場所である橋の上で待ち合わせをする。
まだ5時前なのに人が混み合っている。
「待った?」
「ううん、今来たばかり」
奏は麻の黒のシャツに黒のパンツ、セットアップで中々決まってる。
「行こっか」
「うん」
奏の後ろを歩いているけど人が多過ぎてはぐれてしまいそう。
「瑠璃、ごめん歩くの早いよな」
「ううん、大丈夫」
とは言ったけど奏は手を繋いで少し歩く速さを緩めてくれた。
奏が特別席を用意してくれて椅子とテーブルがあって目の前に人がいなくて花火が見える絶好の場所で見れることが嬉しい。
「花火ちゃんと見るのいつぶりだろう〜」
「俺は一昨年は別の場所で見たな〜」
「一昨年は、部活で遠征に行ってたから大学生ぶりかも」
「結構久しぶりなんだな」
「そうだね、だから楽しみ」
「花火始まる間、出店で買ってこようか?」
「うん、私たこ焼き食べたい」
「じゃそれ買ってくる」
タコが大好きだから出店でタコ焼きを頼むのが毎回のこと。
「ありがとう」
大きな花火大会だから特別席もたくさんあってカップルや家族連れがたくさんいる。
「あのそこのお姉さん」
「は、い?」
甚平着てる顔が整ったイケメン。
右耳に何個も開いてるピアスが目立っている。
ちょっとやんちゃな人なのかな。
「1人で花火に来てるの?」
「いや、友達と………」
「なら俺と見ない?一目惚れしたから」
「え?」
いわゆるナンパってやつ。
初めてだからナンパされるの緊張する。
「でも友達いるので無理です」
「友達に連絡して欲しい」
「いや、、そんなことは………」
「お願い、一緒に見よう」
手を掴まれて目をじっと見られる。
誘うのが上手だなこの人。
ナンパしてる人は手慣れてるイメージあるけどホントだ……
なんか断りにくいし、女性がついていくことも今ならちょっと理解できる。
でも、私は恋愛体質ではないしそもそも一目惚れしない。
「ごめ……」
「無理、俺と見ることになってるから」
いつの間にか奏が来ていて私の肩を奏の方に引き寄せて来た。
「それに友達じゃない、彼氏。だから俺の女に話しかけてくんな」
「……チッ、分かった」
そう言って男性は離れて行った。