中島くんは私を離さない
焼き鳥屋の前で奏と並んでいると、
「瑠璃っぺと九条先生!」
3年生の吉高くん。
去年私が副担任だった時のクラスの子。
野球部でもう引退したから髪が伸びてて一瞬分からなかった。
「2人付き合ってるんですか!!」
「違うよ、同僚として来てるの」
「なんだ、前に2人で出かけたところ見たことあるから内緒の恋してんのかと思いました」
「えー、それいつ?」
「今年の冬とかだったと思います」
「あーあれか、新しくできた焼き肉屋出来たからそこに行った時かもな」
奏は肉が大好物だから食べ放題に女性である私を無理矢理連れて行って私も調子に乗って食べ過ぎて3kgも太ったんだった。
「あーあの時ね、でも付き合ってないから勘違いしないでね」
「お似合いだと思います2人」
「ありがとう、でも同僚だk……」
「俺もそう思う」
「「え??」」
吉高くんと声がダブった。
「同い年だしまぁ仲はいいから似合わないと言われるよりは嬉しいだろ」
「そ、そうだね」
友達としてお似合いってことだよね。
考えすぎはよくない。
「じゃ期待してまーす」
「俺らのことはいいから推薦頑張れよ」
「はーい」
まさか生徒から見つかるとは…
ちょっと恥ずかしい。
そうは言ってもうちの学校の生徒がチラホラ見える。
吉高くん以外にも何人か生徒が来てみんなから、「付き合ってるんですか!?」
と聞かれる。
毎回「違うよ、違う!!」って言ってもみんな「えー本当ですかー?」
と疑われ、「本当だから同僚なの!」
と説明するまでがオチ。
ここは高校から近いから生徒がいるのに全然考えていなかった。
ここは私服を着ればよかった…
浴衣を着るからもっとカレカノっぽく見えてしまう。
早く焼き鳥買って戻らないとなぁ…
「生徒多いな」
「そうだね、私特別席で待てば良かったね」
「ナンパされるよりマシだからいいだろ」
「そう、なのか、な?」
「そこ疑問に持つか?ナンパされるより生徒に見つかった方がマシだろ、同僚だし堂々としてればいいんだよ」
「そうだね」