中島くんは私を離さない
病院について応急処置をして2時間。
すでに夜になっている。
「うぅ……」
「目が覚めた?」
「ここは?」
「病院だよ、熱中症だって」
「そうなん……頭いった…」
「起きなくていいからゆっくり寝て」
「合宿はどうなるんですか」
「中島くんは参加できないよ、親御さん呼んで体調良くなったら退院することになった」
「明日朝退院して少しでも練習します」
「ダメ、明日は午前中で練習が終わるし熱中症は軽度ではないし医者によると慢性的な疲労と膝も壊してたなんてどうして言ってくれなかったの?」
「別に平気なんで」
「でも痛いんじゃないの?」
「動いてれば怪我は避けられないし無理はしてないから大丈夫」
「でも怪我してる時点で無理してるんだよ、熱中症になるまで自分を追い込まなくてもいいのに」
「頑張ってる所先生に見せてアピールしたかっただけ」
「ウソ言わないで」
「ウソじゃない、好きな人の前では言葉だけじゃなくて行動でもアピールするのが普通だから」
「私にアピールするために部活してるの?違うでしょ」
「今はそうかな」
「………」
「半分結果、半分は先生に見せたいから、かな」
「そ、そうなんだ…」
ちょっと嬉しい自分がいる。
戸惑いよりも嬉しいって気持ちが勝つ。
どうしちゃったの私。
完全に拒絶できない。
「それにやっぱりテニスが好きだから頑張ってるだけ」
中島くんがこんなに真面目で熱心な生徒だと思わなかった。
見た目では少しチャラそうなのに成績はいいし真面目だし、ドSだけど周りがしっかり見えてる感じがする。
「明日朝また来るね」
「先生ちょっと待って」
右手を掴まれて振り向くと訴えるような目じゃなくて寂しそうな目をしている。
私に行ってほしくないような、心細い顔をしている。
「僕のそばにいて」
「…ダメだよ」
「少しでも九条先生より僕のことも考えて欲しいな」
そう言われると断れない。
いや、本当はダメなんかじゃない。
ただの「先生」としての悪あがき。
本当は中島くんのそばにいてもいい。
だから、
「分かった側にいる」