中島くんは私を離さない
「終わったーー、ちょうど10分で終わった」
「お疲れ、私もこれから大変〜」
「テスト期間は大変だよな」
「そうだね」
こう話してると、早く断らなきゃと思う。
切り出したいけど切り出せない。
でも言わなきゃ、私のためでもあるし奏のためでもある。
「何が食べたい?寿司?焼肉?」
「奏」
「どうした」
「ご飯やっぱりやめよう」
「どうした?急用か?」
「違うの」
「じゃどうして?」
「奏とは、恋人にはなれない、ごめん」
恐る恐る奏の顔を見ると悲しげだけど疑問に感じてるような顔をしている。
「好きな人いないって、言ってたよな」
「その時はいなかったよ、でも今はいるの」
「中島だよな」
「………」
「いくらなんでも階段でキスするのおかしいだろ」
「その時は本当に好きとかなくて…」
「でも次第に好きになったってのか?生徒に」
「…そうだよ」
「ハハッ」
乾いた笑いをする奏。
「分かってるダメだって、何十回もダメと思った、でも既に中島くんが心に入ってた。だから奏とは付き合えない、ごめん」
「これ見て」
デスクに置かれたのは、私と中島くんがキスしている写真と、私のマンションの前で2人で話してる写真。
ざっと20枚はある。
「これなに………」
「見ての通り証拠写真」
「証拠って……」
「だからこれをばらされたくなかったら付き合って」
「なにそれ…」
奏がそんな卑怯な方法を使ってくるとは思わなかった。
今まで写真を取っておいたってことはこういう時のための切り札として使いたかったから。
まんまとやられてしまった。
「バラされたら中島くんは停学か退学だろうな」
「だったら付き合えって?」
「そういうこと」
「なんでこんなことするの?」
「春から気付いてた、中島が瑠璃を好きなこと、そして瑠璃が中島に傾いてることも、それが嫌だったから」
「でも、こんなことしちゃダメでしょ」
「ここまでしてまで瑠璃が欲しかったから」
「こんなことする人と付き合える訳ない」
「じゃばらすよ?」
「……奏」
土下座して奏にお願いする。
これしか私に出来ることはない。
「担任として、お願いしてる、将来を決める大事な時期なの、高校生を辞めさせるわけにはいかないの、だからお願い、この写真を捨ててください」
「俺と付き合うってことだな?」
「それは……」
「お前には2つしか選択肢がない、写真を捨てる代わりに俺と付き合うか、付き合わないなら写真をばら撒く。写真を捨てて、俺とも付き合わない、土下座して、なかったことにするなんてそんな都合のいいこと考えるなよ。」
奏にはなにも効かなかった。
私ができること。
「分かった、付き合うから、写真を捨てて」
「分かった、それがベストだもんな」
最初から私がそうするって分かってて、その選択肢しか与えなかったんだろう。
奏がこんな人だと知ったことが1番悔しいけど、仕方がない。
好きな人のためだから。